No border ~雨も月も…君との距離も~
ー 横浜 赤レンガ倉庫 ー

港からの風を 受けながら…クリスマスライブの始まりを待つ。

冬の空気がヒヤリと心地よく…肌寒さは 人々の熱気をうまく中和していた。

赤いレンガの倉庫を横目に 私は少し高くなっている石段のテラスから 万華鏡のような…複雑な輝きのツリーが続く並木道と…人がひしめき合い いよいよ始まろうとするライブ会場のステージを見つめる。

ここからのステージは メンバーの表情は見えるものの
少し離れて感じる。

あたり前か…BIG4の総動員数 200人…とは 訳が違う。

何百人……? いや…何千人……だよね。

悔しいくらい 胸が震える。

シンに……逢いたいと 思うのに、胸が苦しくて 震える。

この 人だかりの距離に……震える。

遠い……。 やっぱり遠いよ。


シンからの 伝言で……Dーカクのスタッフの男の子がさっき 待ち合わせ場所に “ staff ” と書かれた ネームホルダーを、持ってきてくれた。

シンも メンバーも雑誌の取材が入って 出て来れなくなったらしい……。

“ 頑張って……” の一言を伝えられなかった。

そして、PM13: 00 第一部 の幕が上がる。

チカチカと色を変えるツリーの電飾が消えて、スモークが勢いよく ステージを埋め尽くす。

肩からずり落ちる パーカーの帽子を 深めにかぶって……白のTシャツ と、膝が ほぼ出る感じのダメージジーンズ。

シンは普段とあまり変わらない姿で 舞台に立つ。

それなのに…どうして こんなに放たれるオーラが違うのか……。

まるで 弾き飛ばされるかのような、シンのワンフレーズに 人々が 悲鳴をあげる。

「 シーーーーンっ! 」

「 翔平くーーーーんっ!」

「 タケルぅーーーー会いたかったぁぁ!! 」

「 ヤバいっ!カッコいい……っ!無理っーーーー
カッコ良すぎて…泣くぅーーーー!! 」

私の隣で 女の子たちが ぴょんぴょんしながら抱き合っている。

タクちゃんのいない 彼らのライブを、私も…鈴ちゃんと同様に受け入れられるのか…戸惑いは無いと言ったら嘘になる。

けれど……

嘘みたいに、ミナトさんとジェイは違和感がなく…… 自然に タクちゃんの空気も、そこにあるような気がした。

そう……そうなんだ。

DNAーカクテルは、泣けるくらい カッコいい。

私は マフラーに顔を埋めて 熱くなる目頭に力を入れる。

涙で シンを見失わないように……。

胸の震えが 止まらない。






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