No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 まだ しばらく…麻酔が効いていて 目が覚めないらしい。

紗奈、 ありがとう。 夏香の側にいてくれて…。」

「 ううん。まだ 新幹線の最終まで時間 あるし…夏香さんが目覚めるまで 一緒にいるよ。」

「 紗奈。 今日 帰るの?」

「 うん。明日、仕事だから…… 」

「 ……そっか。 新しくなった “ オーガニック.GARDEN ” 評判いいみたいだね。

少し……病院、出よっか。」

「 うん。」

私とシンは病院から ほど近い公園へと向かった。

都会の夜景と 港が見下ろせる……丘の上。

展望台に辿り着くと 高台から 見下ろす夜景の美しさに 私は思わず声を漏らした。

「 うわぁーーーー! 綺麗……。」

冬の澄んだ空気が、灯る電飾を一つ一つ…くっきりと浮かび上がらせる。

「 この前の約束……まだ、守れてなかったから、
とりあえず、レインボーブリッジとスカイツリーっ!!」

「 (笑) ホントだ。まだ、お預けのままだったね。

ありがとう……シン。」

シンは……少し 照れた笑いを残して 前を向く。

「 ごめん。 今度、ちゃんと連れてくから…… 」

「 あれが……レインボーブリッジ? スカイツリーって こんなに近いんだねっ!」

夏香さんが 苦しんでいる時なのに……少しはしゃいでしまう自分に気づく。

「 (笑) あれは、横浜マリンタワー。どうみても 形、違わねぇ~(笑) 」

「 えっ?(笑) スカイツリーじゃないの?」

「あっち……レインボーブリッジの近くの。

遠くにぼんやり青紫色の ちっこいヤツ…あれだよ。

スカイツリー。」


シンと いたら、冬は寒くない季節。

2人でいたい……ずっと。

3人……だね。

ずっと……一緒に いられたなら……


せめて、3人一緒にいた 粉雪を伝えたい。

ママの知ってる 粉雪は……とても温かかった。

そう……伝えたい。



「 どれ~?小さすぎて 分かんないよ(笑) 」

「 あれ。あれだよ……ホラ、微妙に ぼんやり色が変わってたりする…。クリスマスだから。」

私は シンの指差す スカイツリーを背伸びしながら探す。

「 あぁ~っ。あれっ!あれだぁ…… 」

「 (笑) ちっちぇーーーー!(笑)

いつか……スカイツリーの最上階から 東京を見下ろしてやろうっと。!! 」

シンは、私の好きな あの笑顔で夜景の見える 植え込みの縁石に飛び乗った。

子供みたいに 無邪気な シンが幸せそうで…苦しくなる。

苦しくなるよ。


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