No border ~雨も月も…君との距離も~
シンの 未来を、輝かせたかった。


誰だったか……成功を手にした人が言ってた。

簡単ではないと。

大きな夢を手に入れるには……覚悟もいる。

迷いの無い その先に……

手に入れた分の 無くしたものがあると。

大切な物を 失う覚悟がいると。


シン……

どうか、私を無くした大切な物だったと

せめて 一度でいい……そう 思ってくれるなら

私は それでいい。


シンとの思い出があるから。だから…私はこの先も歩いて行ける。

色々な シンが 私の中に居て……

この先も……ずっと。

色んなシンが、居る……

歯を磨く姿……いつも じっとしてなくて、ふらふら歩き回って 磨くでしょ。

虫とお化けとキムチは苦手でしょ……辛いのは お腹、壊すもんね。

トイレットペーパーは 使いすぎ。

電話もSNSも俺ペースのマイペース……自撮りは雑。

酔うと甘える。 弱ると甘える。小さい傷に怯える。

たまに、寝言で文句を言う。

「 うるせっ。」とか「無理っ!」とか……。

首の後ろ、くすぐると やけに笑う。

そして……すぐ謝る。

そして……優しい。

私を……愛してくれる。



シンのことが 好きだよ。

色んな シンが 好きだよ。


「 ……何で。何で、そんなこと言うの?

突然……。」

シンは 思ってもいなかった私の言葉に、ただ驚いた表情を見せる。

「 誰もが見ることのできない……誰もが登ることのできない 夢の頂上は、その時、その一瞬にしか 登るチャンスは来ない。

シンなら、見ることができる。

Dーカクなら……その頂上に立てる…… 」

「 何? だから……なんで? 夏香に、また 何か言われた?」

「 違う…違うよ。」

「 じゃぁ……何で、そんなこと言うの…?」

「 夢の頂上を、その目で確かめて…。

そして……その先に 何があるのか、シンなら見ることができる……。

叶えられるよ。

夢の絶景は、きっと……

この夜景より 広くて大きい。」

「 紗奈が いないと、見れないよ。

夢の先に、紗奈がいないと……見れないよ。」

まつ毛に乗る 粉雪が 私の瞳で溶ける。

大好きな シンが……ぼやける。

粉雪は、私と同じ体温を持っているのだろうか……

温かく、潤んで 溶けて……流れる。

この瞳に 溢れるのは 粉雪……?



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