No border ~雨も月も…君との距離も~
シンを 傷つけたことを、私は 一生…後悔する。

シンと 別れたことを、私は一生…後悔する。

シンに ついた嘘を一生…抱いて 生きる。

世界一の……ファンだから。

DNAーカクテルの シンを縛ることは……私にとって、もっと……もっと……後悔するから。


“ 可哀想だよ……。”

シンは きっと、立派なパパになれた気がする。

この一言で……そう思う。


「 ごめんね……さよなら。 シン。」

私に 絶望するシンの涙は やっぱり……儚くて 切なくて 愛しかった。

「 紗奈にとって……俺たちの子供は いらなかったの……?

半端ない……存在じゃなかったの?」

残酷な 彼の最後の質問に、私は背を向ける。

顔を 見せないように……

肩が 震えないように……

声を潜めて……泣きじゃくる。



「 私にも……叶えたい夢があるよ。

夢があるのは……シンだけじゃ…ない。」



残酷な嘘をついて、私はもう…二度とシンに逢わないと 心に決めていた。


残酷な嘘を、ちゃんと最後に言えたと思う。


宝石の欠片のような パウダースノーは、私と彼の間に真っ白な 境界線を引いて……

それでいて……優しく……。

私の頬を伝う涙を どうか……凍らせて。

止まらない涙を…… 凍らせてしまえばいい。

優しい パウダースノーは、二人 一緒にいた足跡を消して…降り積もっていく。

吐く息が 白く濁って、私からシンを奪っていく冬の景色が 胸に絡み付く。


あの日、私は心にborderを 引いた。




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