No border ~雨も月も…君との距離も~
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シンが 病院に戻った時には、もうすでに消灯を過ぎて 夏香との面会も 夜間入り口で 断られてしまう時間だった。
仕方なく…長く直線に伸びる 暗い廊下に目をやると、
そんなシンに 気づいてか 長椅子から 品の良い夫婦が腰を上げた。
光沢のあるコートを腕にかけた 白髪混じりの男性は、シンを待っていたのだろう…ずぶ濡れのシンの前に立ちはだかり、ジッと顔を見つめて そのまま 黙って…シンの頭の天辺から 足の爪先にまで その視線を這わせた。
「 あの………。」
シンの言葉を遮るように 男性は口を開く。
「 君は……どこまで 娘の人生を翻弄する気だい?」
彼の 物静かに話す声が 廊下に響き渡る。
「 ………………。」
「 私たちにとって、大切に……大切に育ててきた一人娘なんですのよ。」
男性の隣で 同じく品の良い女性は、必死で シンを見つめた。
よく見ると 顎のラインから唇の形……夏香に似てる。
「 娘は……お前のような男のために、自分の命まで投げだそうとして……。」
夏香の父親の拳は 微かに震えている。
「 これまでだって 私たちの反対を押し退けてまで…あなたの事を 支えてきたはずよ……。
女子大を辞めて……あなたのマネージャーとして、支えたいって。」
「 ………………。 すみま……せん。」
「 バンドのボーカルだがなんだか知らないが……君は娘をどう 思っているんだね。」
夏香の父親の声に、深くて強い想いを感じる。
「 こんなに 娘が苦しんでいるというのに……君は 娘の側に居てやることすらしないのかね。」
「 あなたは 娘の気持ちに答えることは 出来ないのかしら……。
あの子は……あなたの事を 誰よりも思っているのよ。
誰よりも……きっと。」
「 このまま……娘の足が動かなくなったら、君は責任をとってくれるのかねっ!」
「 ……………それは…… 」
「 私たちでは ないんだよ……。悔しいけれど。
娘を救えるのは……娘が望んでいるのは……悔しいけれど……
君しか……いないんだよ。」
シンが 病院に戻った時には、もうすでに消灯を過ぎて 夏香との面会も 夜間入り口で 断られてしまう時間だった。
仕方なく…長く直線に伸びる 暗い廊下に目をやると、
そんなシンに 気づいてか 長椅子から 品の良い夫婦が腰を上げた。
光沢のあるコートを腕にかけた 白髪混じりの男性は、シンを待っていたのだろう…ずぶ濡れのシンの前に立ちはだかり、ジッと顔を見つめて そのまま 黙って…シンの頭の天辺から 足の爪先にまで その視線を這わせた。
「 あの………。」
シンの言葉を遮るように 男性は口を開く。
「 君は……どこまで 娘の人生を翻弄する気だい?」
彼の 物静かに話す声が 廊下に響き渡る。
「 ………………。」
「 私たちにとって、大切に……大切に育ててきた一人娘なんですのよ。」
男性の隣で 同じく品の良い女性は、必死で シンを見つめた。
よく見ると 顎のラインから唇の形……夏香に似てる。
「 娘は……お前のような男のために、自分の命まで投げだそうとして……。」
夏香の父親の拳は 微かに震えている。
「 これまでだって 私たちの反対を押し退けてまで…あなたの事を 支えてきたはずよ……。
女子大を辞めて……あなたのマネージャーとして、支えたいって。」
「 ………………。 すみま……せん。」
「 バンドのボーカルだがなんだか知らないが……君は娘をどう 思っているんだね。」
夏香の父親の声に、深くて強い想いを感じる。
「 こんなに 娘が苦しんでいるというのに……君は 娘の側に居てやることすらしないのかね。」
「 あなたは 娘の気持ちに答えることは 出来ないのかしら……。
あの子は……あなたの事を 誰よりも思っているのよ。
誰よりも……きっと。」
「 このまま……娘の足が動かなくなったら、君は責任をとってくれるのかねっ!」
「 ……………それは…… 」
「 私たちでは ないんだよ……。悔しいけれど。
娘を救えるのは……娘が望んでいるのは……悔しいけれど……
君しか……いないんだよ。」