No border ~雨も月も…君との距離も~
この坂を 登れば……
懐かしい トタン壁の家が目の前に現れる…はず。
けれど、
視線の先に飛び込んできたのは、大きな重機と汚れたトラック数台。
ヘルメットをかぶった作業員が数名……
シンとの家を 取り囲んでいた。
私は いつもの街灯の下に 車を停めると 作業員の一人を呼び止めた。
「 あの……ここ。 この家……私の知り合いの家なんです。
あの……何か…… 」
「 あぁ~。取り壊すんだわぁ。
旧タウンもできるだけ 道を広くして…新しくニュータウンに繋げようってことで…
町計画っていうやつだな。
どうせ 住んでいないらしいから、ここなら高値で売れそうだしね。」
「 …………そんな。
あの……今からですか……?! 」
「 ああ。 今から……。」
ジャケット……。
シンのジャケット……置いたまま。
“ 取りに帰るよ。 ”
そう言って……私を抱きしめた シンの寂しげに笑った顔、シンの温もりを思い出す。
躰中から……溢れるように 思い出す。
私の体が 勝手に動き出す。
おかしいよね……。
今さら……おかしいよね。
シンには 新しいジャケットが 沢山 用意されている。
もう……必要のない ジャケット。
それなのに、
よく分かってて……よく分かってるのに、
私は 作業員が止めるのも聞かずに、
二人の家の、二人のロフトに掛け上がる。
シン……っ!! シン…………
扉を開けると、南側の大きな窓から入る明るい光の中で……小さなホコリ達が舞い上がる。
微かに残る……シンの香水の香り。
懐かしい、シンと交じり合う空気。
主のいない この家は、まだ彼を待ち続けているかのように……思い出が 詰まっていた。
ひっそりと……ただ シンだけを待っている。
きっと、ずっと…ずっと この部屋はシンを待ってる……はずだった。
取り壊される。
それは……もう、二度と ここへは帰らないという、
シンの 決意。
私は 息を切らせて 部屋を見渡す。
ガランとした空間は マットレスの置いてあった位置だけ、色落ちせずに その形を残していた。
シングルのマットレス。 二人では…窮屈すぎたことを実感する。
懐かしい トタン壁の家が目の前に現れる…はず。
けれど、
視線の先に飛び込んできたのは、大きな重機と汚れたトラック数台。
ヘルメットをかぶった作業員が数名……
シンとの家を 取り囲んでいた。
私は いつもの街灯の下に 車を停めると 作業員の一人を呼び止めた。
「 あの……ここ。 この家……私の知り合いの家なんです。
あの……何か…… 」
「 あぁ~。取り壊すんだわぁ。
旧タウンもできるだけ 道を広くして…新しくニュータウンに繋げようってことで…
町計画っていうやつだな。
どうせ 住んでいないらしいから、ここなら高値で売れそうだしね。」
「 …………そんな。
あの……今からですか……?! 」
「 ああ。 今から……。」
ジャケット……。
シンのジャケット……置いたまま。
“ 取りに帰るよ。 ”
そう言って……私を抱きしめた シンの寂しげに笑った顔、シンの温もりを思い出す。
躰中から……溢れるように 思い出す。
私の体が 勝手に動き出す。
おかしいよね……。
今さら……おかしいよね。
シンには 新しいジャケットが 沢山 用意されている。
もう……必要のない ジャケット。
それなのに、
よく分かってて……よく分かってるのに、
私は 作業員が止めるのも聞かずに、
二人の家の、二人のロフトに掛け上がる。
シン……っ!! シン…………
扉を開けると、南側の大きな窓から入る明るい光の中で……小さなホコリ達が舞い上がる。
微かに残る……シンの香水の香り。
懐かしい、シンと交じり合う空気。
主のいない この家は、まだ彼を待ち続けているかのように……思い出が 詰まっていた。
ひっそりと……ただ シンだけを待っている。
きっと、ずっと…ずっと この部屋はシンを待ってる……はずだった。
取り壊される。
それは……もう、二度と ここへは帰らないという、
シンの 決意。
私は 息を切らせて 部屋を見渡す。
ガランとした空間は マットレスの置いてあった位置だけ、色落ちせずに その形を残していた。
シングルのマットレス。 二人では…窮屈すぎたことを実感する。