No border ~雨も月も…君との距離も~
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シンは……ドームの一番奥のスタンドを見つめる。

毎回、必ず……ライブのたびに このドームで 一番、遠いであろう その場所を見ようと思う。

そう……

その先を、その先を……そうやって 突っ走ってきた。

がむしゃらに、走ってきた。

ここに集まる 沢山の笑顔に会いたくて…その先を一緒に見たくて……。

もし、自分が 何の為に存在するのかと聞かれたら、迷うことなく……この沢山の笑顔の為に 僕は存在する。

そう 答える。

DNAーカクテルは…もう メンバーが 操ることが出来ないくらい 大きくなり この4年で トップアーティストと呼ばれるまでに 登り詰めていた。

多くの物を手にして…ここに立つ者にしか見れない景色を…この目で見た。

そこには、何があったか……

何に 辿り着いたか……

答えは まだ 出ない。


まだ……夢の途中。


この大きなステージに立つのと 引き換えに、無くした物を 数えたことは……まだ なくて、

ただ……いつも、ふっと イヤモニのズレを直すとき、マイクスタンドを口元に合わせる時……

海の底に 落としたコインを探すように、果てしない喪失感に ボーッとする……

そんな瞬間。 このドームの先が怖くなる。

孤独に……怖くなる。

けれど、その感覚は一瞬で…止まる事など出来ない。

メンバーの笑顔に お客さんの笑顔に……歌う人生がなければ ……自分ではなかった事に 気づかされる。

歌う人生がなければ、自分らしくいられなかった。


ふっ…とした喪失感を 仕舞い込んで 進むと決めた。

傷を……

傷を 忘れない為に、この人々の大海に 沈めようとし
て、沈めた。

その傷は……とても 深く 深く……深い所で眠っている。

その傷は、どんなに沈めようとしても …沈めても、忘れない。

そして、今日も僕は歌う。

力の限り……今日も歌う。

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