No border ~雨も月も…君との距離も~
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シンは パールホワイトの高級ワンボックスカーの後部座席に 乗り込む。

「 お疲れ様です。」

運転手のスタッフに頭を下げる。

サングラス越しには 薄暗い ドームの地下通路。

ニット帽の額に それを押し上げて、スマホを開く。

「 シン、打ち上げ。 寿司?肉? どっちがいいっ?」

夏香が 助手席から 振り返る。

「 今から……?取れんの?(予約…) 」

「どっちも 御贔屓のお店だし、バンド名言えば 奥の個室 開けてくれるわよっ!

なーーんせっ(笑) 世界の、Dーカク でしょ。」

「 ………ははっ…(苦笑) 」

「 肉っ!」 (翔平)

「寿司。」(ミナト)

「 お肉……♡」 (ジェイ)

「 寿司っしょ――!! 」(タケル)

「 で。 ファイナルアンサー。 シンは? 」

シンが スマホから顔を上げると、5人がじっと視線をよこす。

「 怖ぇ――よぉ。 食い物の 怨念っ(笑) 」

地下から地上に出ると…大きな月の光が 都会のビルの高さを越えて、上の方から こちらを見つめている。



「 俺……卵焼き、食いたいな。」



シンは そう呟くと…車の外に目を向ける。

黒すぎるフィルムの窓を解放し、月の光に向けて…カメラのボタンを押した。

大阪公演……最終日の月。


昼間……少し 通り雨が降ったせいかな?雲の流れが少し早い。

今、ボタンを押さないと この美しい満月が 雲隠れしてしまう。

「 なぁ……翔平。 俺、変わったかな?
もう、昔の 俺じゃなくなったかな……?」

「 …………ん? 」

隣の翔平は シンの方に 首を向けて 座席に深く座り直す。

「 どうかした? 」

「 いや……何でもない。」



こんなに……美しいフルムーンを見ると、つい……。



「 ……(笑) お前は、お前なんじゃねぇ~の。」

翔平と、シンは お互いに頷く。

「 ふっ…………(笑) だ……な。」


「 ちょっと――!! 二人で笑ってないで ファイナルアンサ――――っ。」

ジェイが シンを覗き込む。

「 ん――――。 寿司……。ん――――肉……。ん――――っ!やっぱ…… 」

「 もうっ(苦笑) はっきりしてぇ~っ。」

「 WWWWWWWW――――っ」✖6







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