No border ~雨も月も…君との距離も~
「 最近、やっと そうやって…素直に思えるんだ。

何処にいても…好きな人は好き。

タクは あっちにいるだけで…私は こっちにいるだけ…。

好きな気持ちにボーダーなんてないっ…て。」

「 そうだね。 鈴ちゃん。」

「 ずっと、タクを好きだから……もし 次に 愛する人ができたら、ここに 連れて来たいと思うの。

タクのことが…好きだと、話すの……

きっと、その人は そんな私を受け入れてくれる……

そう 思っていいかな。」

そう 話す 鈴ちゃんの瞳には、4年たっても やっぱり涙が光る。

「 うん。 次に 鈴ちゃんが恋する人は きっとそんな人だよ。」

「 (笑) 楽しみっ……。」

涙を拭う 彼女に私は寄り添う。

「 あっーーーーー! でも、でもっ!!
そんな人ができたら、ここへ来る前に 私に教えてよぉ~(笑) 」

「 (笑) えーーっ。どーしよっかなぁ~!
タクが先でしょっ(笑) 」

「えーーー(笑) ダメダメっ!私だよぉ~。」

笑い合う 私たちの間に美音が顔を出す。

「 鈴ママっ! タクちゃんに お花♡ 」

鈴ちゃんの鼻先に タンポポの綿毛を差し出す。
3、4本……花束になった タンポポに鈴ちゃんは 手を伸ばす。

「 あーー♡ 可愛い。美音~ありがとーー♡ 」

鈴ちゃんは、改まって 美音の視線にしゃがみ直す。

「 こうして……こうしてね。 フゥッ~ってすると、タクちゃんに 届くよっ。

届く……お花だね~ (´▽`) 」

「 うん。そうだね~! 届くね。 タクに…届くお花だね。」

美音の小さな手に 握られたタンポポの綿毛は、ふわりと風に舞い 大空へと 吸い込まれる。

「 (笑) みーーおーー♡ 」

私は そんな美音を抱き寄せると ぎゅっとして頬擦りをする。

「 あっ! ママっ あそこにもあるよ。 届くお花っ!」

美音は するりと私の腕から 走り出す。

私に 似ていると言われる 美音の面影は…きっと 父親を知らない人が見るからそう見える。

ふとした横顔は、シンに似ていてドキッとする。

自由な感じも……シンなのかもしれない。

「 ……ねぇ…紗奈。

シンは、生きてるよ……。」

久しぶりに、鈴ちゃんの口から シンの名前を聞いた。

「 ………何……?突然……(苦笑) 」

4年たっても……胸が苦しくなる。

何年たっても 何十年たっても シンは忘れられない人。


鈴ちゃんは、今もタクちゃんに恋したまま……

私は……

私も……

今でも……

月に ドキドキする。

冷蔵庫の卵は切らさないようにしている。

街で 擦れ違う…シンと同じ香水に振り返る。


シンは……生きてる。


「 紗奈と……もう一度、新しい恋を探そうかと 思った。」

「 鈴ちゃん……。」

「 けど、けどね……シンは、生きてる。

美音は シンの子供だから。

美音の父親は、この世に 一人じゃん……。」

鈴ちゃんは 喉を詰まらせる。

「 ……鈴ちゃん。 でもね……

DNAーカクテルのシンは、やっぱり……もう 私の手の届く人ではないと思う。

生きる世界が……違うって……思うのね。」

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