No border ~雨も月も…君との距離も~
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女子トイレに入ると、すぐ手前の洗面台に顔を近づけて カオリちゃんが2度ほど 嘔吐いていた。

「 カオリちゃん………。 大丈夫? 」

「 ………………。!? 」

私とカオリちゃんは 鏡の中で目が合う。

水の流れに、唾を吐いて…カオリちゃんはハンカチで口元を 押さえながら 私に振り返った。

「 平気?………ツワリ……だよね。」

「 ………さっきは、ごめんなさい。私…知らなくて。 」

今にも消えそうな、カオリちゃんの声。

白すぎる肌が……やっぱりキレイな子。

私は、首を振って

「 ううん。私こそ……子供みたいに 飛び出した。」

少し、照れながら 笑う。

「 シンは何も関係ないから……。
お腹の赤ちゃんだって、全然 関係ないし。
なのに……
私、いつまでも シンに甘えてしまって……。」

私は、もう一度 首を振って 微笑んだ。

カオリちゃんが 一生懸命 話しているのが伝わって……今、会えたことが 嬉しかったりした。

「 シンのことを、私のせいで誤解したりしたのなら、ホントにごめんなさい。
彼……
優しすぎる……から。」

「 (笑)カオリちゃんに、そう言ってもらえる シンは……ああ見えて……
いい彼氏だったんだね。」

カオリちゃんは、私の言葉にハッとしたのか
フッ……と笑いを浮かべて、うつむいた。

「 彼氏……じゃなくて、あの家をシェアしてただけ……。
ただの 同居人だったの、私たち。」

「 …………。ええっ?」

「 ごめんなさい……。何もなかったって言ったら嘘になるけど……
シンは、私のことを一度だって、好きだなんて思ったこと……ないよ。」

カオリちゃんは、開き直ったように呟くと もう一度……鏡越しに 私を見る。

何か 吹っ切ったような……覚悟したような……強い眼差しに、私は 思わずチクン…と緊張する。

「 …………。カオリ…ちゃん? 」

「 私が……シンを縛り付けてた。
優しすぎるのを、いいことに……
シンを、束縛……してたのかもしれない。」

カオリちゃんは、振り返って 私をじっと見る。

切ないくらいに……細い、彼女の肩からニットがずり落ちる。

「 ………………。」

本日、2回目……

言葉を……

返せない。

「 お腹の子は……シンを 自由にしたのかもっ。
もう……
彼を 放してやれって………。」
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