No border ~雨も月も…君との距離も~
寄り道のコンビニ。

自動ドアが開くと 暖かい空気が 鼻先を掠めて、やっぱり外が寒かったことに気付く。

シンは タブレットとキシリトールのガム、 砂糖もミルクも全部入ったアイスコーヒーを手に取ると

「 紗奈は? 何? 」

と私に 声をかけてきた。

私が 暖かいお茶のペットボトルに手を伸ばすと、それをパッと持ち去って、レジへと向かう。

コンビニに入ってすぐに……ガム。
それから……奥へ向かって、ドリンク。

こんな人……よくいる。(笑)

すごく些細なことでも……すごくどうでもいい事でも……少しずつ シンの事が、わかっていくのが嬉しくて……何でも知りたいと思った。

「 ガムは、禁煙してからだよ!」
とシンが ぼやく……。

コンビニでの買い物。

意外にも、コーヒーはブラックはダメらしい(笑)

カオリちゃんのこと。

お母さんのこと。

柔らかい唇………。

それから………………

気がつくと 私とシンは、BIG4の入口に立っていた。

トクン………………

高鳴るのは、喉の奥の方。

凍える冬の道。

たどり着いた 真夜中の 隠れ家。

私が 鍵を開けると、シンは少し笑って こっちを見る。

「 2人で 全館、貸し切りっ!! (笑) 」

真っ暗な事務所に入ると シンは非常口の緑色の灯りだけを頼りに、エアコンのスイッチを入れる。

「 俺、1ヶ月前にもここで 寝てた。
アルバムのレコーディングで1週間……缶詰。
結構、寝れるよ (笑) このソファー。」

シンと私は、それぞれに上着を脱ぎながら 古い革のソファーに目をやる。

「 あっ………。そっか。今日は、2人…か。」

ボロいエアコンの起動する音だけが響く。

狭い事務室。

狭い……ソファー。

どうしよっか……と答えが出る前に シンと私はお互いに抱き合って、おあずけ……のままだった唇を夢中で合わせた。

そして………2人の重みで ギシギシうるさいソファーにキスしたまま 倒れ込んだ。

このまま……どうなってもいいと思った。

シンになら……どうされてもいいと思った。

Tシャツ越しに感じる 見た目よりずっと広いシンの胸に耳をあてると、その鼓動がやたらと穏やかで心地好くて……ずっと聞いていたくなる。

シンも私をギュッと抱き締めて、しばらく首筋に顔を埋めたまま、時折……優しくそこに唇を滑らせた。
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