No border ~雨も月も…君との距離も~
それから 夏香さんの 遠ざかる足音に、ホッとする自分がいたりした。

それは シンも同じだったようで……

彼女がAスタに入って行くのを確認すると 私の顔を見て 小さく笑った。

「 シンの書いたashの歌。
聞いてみたいな……。」

「 ホントに?(笑) 」

私は 転がったペンを拾い集めて、シンの足元まで
手を伸ばす。

そのペンを シンが拾って、私に差し出す。

「 …………。 ? 」

どうしたことか……。

シンは 差し出したペンを握ったまま…放さない。

「 …………シン? 」

私は、目の前のシンを 見つめる。

くすみのない 彼の瞳に吸い込まれそうになる…。

「 明日の朝、仕事……休んでよ。」

「 …………えっ。 でも……。」

「 そしたら、書くよ。 ラブソング。」

「 …………。 」

「 ダメかな。 」

その……甘えた顔は……破壊力しかない。

テロ……だよ。

私を、どれだけ壊せば 気がすむんだろう……。

可愛い……テロリスト。

「 (笑)……うん。 わかった。」

「 俺、早く 帰るから。」

「 待ってる……。」

シンの書いた ラブソングを 聞いてみたかった。

シンの傍に いたかった。

スレ違いの朝を シンと一緒に 過ごしたかった。

< 44 / 278 >

この作品をシェア

pagetop