No border ~雨も月も…君との距離も~
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なんだか……ドキドキして眠れなかったくせに…

いつの間にか 爆睡。

私は、鍵の開く音で ボンヤリと目を開けた。

まだ 薄暗いけれど低い位置で朝日を感じる。


シンの家は1LDKの不思議な造りの一軒家。

シンのお祖父ちゃんが経営していた自動車整備工場をリフォームした……レトロ感いっぱいのトタンの外壁。

間取りは……1LDKというより ほぼワンフロアに、鉄骨むき出しの 広いロフトが付いていた。

天井が高く 窓もやたらと大きいせいか……冬はロフトに上がらないと 底冷えがする。

独りで眠る シングルのベッドはやっぱり……少し
温もりが足りない。

下の部屋を歩く シンの足音や、テーブルに鍵を置く音、手を洗ったり 冷蔵庫を開ける音に耳を澄ませていると 少しづつ身体が目を覚ましてきた。

シンは ロフトの階段を上りながら ドカジャンを脱いで アンティークな一人用ソファーに それを引っ掻けると、私の眠るベッドに勢いよく 腰を降ろした。

「 ただいまっ。」

私は、ゆるゆると身体を半分 起こすと…ずり落ちたTシャツを肩で直しながら、少しシンから視線を外した。

「 おかえりなさい。」

シンが じっと……こっちを見ているのを感じるせいか 恥ずかしくて顔を上げられない。

「 ごめん。 起こしたぁ?(笑) 」

ごめん……なんて思ってもないくせに、シンはワザと 私の顔を のぞきこんで 面白そうにクスッと笑う。

「 寒むいんだけどっ。」

そう言って 私の頬に触れた シンの手のひらが氷のように冷たくて、一気に目が覚めた。

私は、その手がすごく愛しくて……

大事に しまい込みたくて……

ギュッと 自分の胸に押し当てる。

どうしたら……この気持ちを 伝えられるだろう。

言葉では……表せない愛しさは温もりが、伝えてくれるだろうか。

シンは、分厚いネックウォーマーを首からはずしながら……私に重なるようにして シーツの中に入ってくる。

シンの髪から 外の冷たい空気の匂いが届く。

「 どこが……一番、冷たい? 指先……?あっ。耳たぶっ!ほら……。」

ドキドキを隠そうと……言葉を探す 私の両手首を
シンが押さえ込む。

一瞬……2人の息が同時に止まる。

「 全部…………。あたためて。」

そう。

そうだね………。

私の体温を 全部……あげるよ。



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