No border ~雨も月も…君との距離も~
「 やっべーーーー! 」
タケル君の 雄叫びが BIG4 全体に響いた。

事務所の16インチのテレビが 震動で倒れるのではないかと、思わず鈴ちゃんが両手で 押さえるジェスチャーをする。

シンが 歌詞を書いて 1ヶ月も たたないうちに、結婚式場のCMが 完成した。

月9のドラマが始まる 直前の30秒。

ウェディングドレス姿の ブロンド。

ほぼ外国人…のハーフモデルの女の子が 粉雪のプールサイドを走る。

カラフルにライトアップされた新設された式場のプールには 水面に白いドレスが映って…虹色の光たちが揺れる。

教会の大きな階段の先で 差し出された 彼の手に触れると……雪は、桜の花びらに変わり、舞い上がる。

そして……抱き合う 二人。

キスする? しない?…………的な 連想を掻き立てておいて、

式場の名前が 映し出される。

“ 君に触れたい式がある。 二人の時間は 家族になる。”

信じられないくらい……(苦笑) やられたフレーズと共に…キスから 目を開けると、親族に囲まれた
彼女の はにかんだ笑顔がクローズされて、30秒が終わる。

その間中……ashの曲のサビの部分がバックで流れて、映画のラストシーンのような仕上がりのCMに、つい……引き込まれてしまった。

何…………コレ。

ステキ……すぎじゃない。 地方のCM のくせに。

たぶん、30秒。

瞬きをしていない。

忘れてた……。

「 もぅっ!やべー やべーって……うるっさいっつーのっ!! お陰で、曲があんまり 聞こえなかったじゃんっ。」

鈴ちゃんが タケル君の背中を バチバチ叩く。

「 て…いうかっ!!シンは 何やってんのぉ~!
びーーーっくりしたっ。」

そう言って、鈴ちゃんは私の方に 振り返った。

「 まさかの…聞いてないって ヤツ。」

鈴ちゃんは タケル君に聞こえないように、小声で耳打ちする。

私は、小さく頷く。

「 ……うん。その、まさか……。」

なんだろう……。

シンと付き合ってることを 他言できない……空気が、そう言ってる……気がする。

たぶん、タケル君が 私たちのことを知る事になっても、

“ へぇ~。マジでぇ。そうなんだぁ~ ” と

受け入れてくれそうな気もするけど……。

サラッと 言えない。

なぜだろう……。

それだけ、シンは こんな片田舎にいても 特別な雰囲気を持っていた。

ごく自然に 人を惹き付けてしまう…華やかなオーラ。

一般的に……そういうのをカリスマ?と言うのだろうか……。

きっと……そう。

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