No border ~雨も月も…君との距離も~
一緒に暮らしている いつものシンを見ていると、どこにでもいるような男の子にも見えたりするし……

カリスマ……と言うより、

マイペース全開…時々 甘えん坊。

成長段階の子供のようにしか見えない時もある。

けれど……

こうやって TVの画面に映し出される彼を見ると、突然 どこか遠くの人に感じる。

私の 手の届かない存在。

芸能人オーラに 少し切なくなる。

「 ねぇ。何で?どういう展開で……シンがCMに出てるの?
しかも……新婦役のモデルと絡んでるしっ!!
夜の……プールサイドで、抱き合ってるじゃんっ!! 新郎役?なんて聞いてないよぉ~!!
キスしそ~じゃんっ!!
どーいうことよぉ~!! 」

鈴ちゃんが 私の代わりに、タケル君に 突っかかってくれた。

まぁ……。

タケル君に 噛みついても仕方がない気もするけど……。(苦笑)

「 まぁ……まぁ。落ち着いて。
だから、やべーって言ってんじゃん。
ねぇ~。 紗奈ちゃん…? あれっ? 顔色…悪くない?」

「 あ……。うん……ちょっと。」

お腹……痛い。

私は、愛想笑いすら上手く作れず……あからさまに顔を歪める。

「 大丈夫? 紗奈?」

「 痛たたたーー。ト……トイレ。」

下腹を押さえつつ、私は そのまま事務所と隣り合わせの 男女兼用のトイレの個室に 逃げ込んだ。

冷や汗が出るほどの 下腹の痛みを堪えて……
古いし、汚いし……の和式便器に跨がる。

「 シン……やばかったぁ~!(笑)
カッコよすぎて……イラつくぅ~! 」

「 (笑)まぁ……ちょっと色々あって、そんなこんなで……ああいうCMになっちゃったわけよ。
シンしかできないよなぁ~。
女の子との 絡み。
照れ屋さんの 俺には無理だっ~!!(笑) 」

「 大丈夫っ!誰もタケル君に求めませんからっ。
(笑) 」

「 はははーーー。……って、おいっ! 」

鈴ちゃんとタケル君が 突っ込み合いながら、はしゃぐ声を 微かに聞きながら……私は、便器の水溜まりに広がる 自分の鮮血を眺めた。

力が……抜けた。

ホッ……した。

この 10日間ほどの、私の取り越し苦労の責任を取って欲しいっ!(怒)

生理がきた安心感を手にした私は、さっきのCMのことを シンの口から一言も聞かされていなかった事に 今更ながら……イラ立ってきた。

なんなのぉーーー!!(怒)

私ってっ! すごーく すごーく……シンに振り回されてるっ!?

めちゃくちゃ 悔しいっ!!

完全に 私の心のペースが……シンという人間、ひとりの為に 一喜一憂している。




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