No border ~雨も月も…君との距離も~
そんな事とは 知らず……張本人のシンは 私の心の内なんかに、全く左右されずに 日々…マイペースを突き進んでいるように感じる。

たぶん、自分の行動……ひとつひとつが私のど真ん中に影響しているなんて、これっぽっちも思っていない。

そーゆーところがっ!イラつくっ。

そーゆーところがっ!無神経でっ。

後先を……考えてないところがっ!心配でっ……

そーゆーところがっ! 好きだってことで……。

悔しいーーーーーーーーー!!

「 紗奈ーーー。 俺 。 ……大丈夫? 」

バイトが遅くなったのか、遅刻してきたシンはトイレの扉を叩いて 私に声をかけてきた。

生理……10日も遅れることなんかなかったし。

すごい 不安だったんだからっ!!

こんなのシャレに なんないって……。

言葉に……できず。

「 紗奈? 本当に、大丈夫? 」

心配してっ(暴れる)

シンの優しい言葉は、私を 天の邪鬼にさせる。

「 大丈夫じゃないよっ!(ふん) 」

私は 細くトイレの扉を開けて チラッと周りを見てから シンを見上げる。

「 ウンコでた?」

ちがーーーーーーうっ!!(泣)

「もーーーっ!! シンのせいだからっ。」

「 ああ……。ごめん、あのCMのこと?
言ってなかったね。」

ちがうけど……それもある。

「 撮影現場、見学されてもらったんだ。
そしたら……監督らしき人が 試しにやってみてって……。元は モデルの女の子一人で撮る画だったらしいんだ。
だから……本気で使われると思って なくて、
俺も、びっくりっていうか……。」

少し むくれた私の表情を見て、焦ってフォローの言葉を探すシンが なんだか可愛くて…

やっぱり……

全てを許してしまう。(悔)

「 そうじゃなくて……。
CMは……よかったと思う。
曲も、シンも……すごくカッコよくて、
ドキッとした。」

「 (笑) ホントっ。 ノーギャラだけど。」

事務所の奥から 鈴ちゃんが心配そうに、こっちを見る。

「 紗奈、調子……大丈夫?」

「 うん。もう平気。」

「 やっぱ、ウンコじゃん!(笑) 」

「 違うって言ってるでしょっ!(怒) 」

私は、シンの二の腕あたりを 力いっぱい ひっぱたく!

「 痛ってぇ~!!(笑) 」

こんなに気持ちが乱れるのは……誰のせいだよっ!

下腹は重いし……イライラするし……モデルの子への微妙な嫉妬も 感じるし……

でも……シンの 才能に一番 ドキドキした。

耳に残るギターのフレーズとストレートに伝わる日本語歌詞は、シンの突き上げるような高音と優しく甘いファルセットにデコレーションされると胸が熱くなる。

私の身体中に 共鳴する。
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