No border ~雨も月も…君との距離も~
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夕方の突然の小雨。

私とシンは、BIG4での 片付けもそこそこに家路についた。

小雨を少しでも避けるように…玄関先まで 離れた駐車場から 手を繋いで 走る。

「 晩ごはん、卵焼きにしようよっ! 」

「 えっ(笑) 晩ごはんでしょ? 」

私は、息を切らせながら クスッと笑う。

笑いながら……転びそうになって、シンの手の平に力を込める。

2人で 狭い玄関に逃げ込んで、少し濡れたジャケットの水滴を祓いながら 私は、まだ息を切らせていた。

「 でも、そういえば…卵、冷蔵庫になかったような気がする。 切らしてるかも。」

「 ………。なんで……? 」

「…………(笑) なんでって、無い時もあるよ。」

「 なんでっ!ダメだよ……。
切らすなよ……。卵っくらい、毎日置いとけよっ! 」

「 …………。ぅ…うん。」

シンが、珍しく感情的になったような気がして、
鼓動が ビクンと固まる。

「 ごめん。今度から……買っとく。」

「 約束して…………。」

「 ……ぅん。 ごめん、約束する。」

何……?

なんで? 私、2回も謝ってんだろう……。

卵を 冷蔵庫から切らせてはいけない。

……と、この時 思った。

後に、シンからお母さんの話を聞いて……シンの気持ちを理解して 胸が苦しくなった。

そっと……抱きしめたくなった。

けれど、まだ事情を知らない私でも、卵は切らせてはダメなんだ……と直感で思った。

そのくらい、その時のシンの瞳は、迷い子のように寂しげで……怯えていた。

「 すぐに……買って来るから。待ってて……。」

私は、そんなシンを なだめるように言うと もう一度、彼の表情を見つめた。

「 俺も 買い物、着いてくよ。」

「 いいよ。待ってて。すぐそこのコンビニだから……。」

「 俺も行くよ。」

「 いいってば。(笑) 誰かに見られるかもよ!」
と、私は 少し茶化すように笑ったが……

「 着いてくよ。」

と言った……シンの目が、今度こそ 本気な気がして、それ以上は 言葉も笑いも 飲み込んだ。

思わず……押し黙る私を シンは、下駄箱とは反対の壁に追い込むと……少し強引なキスをした。

ブーツを脱ぎかけたままの足元は 片方が安定せず……
私はシンの腕でなんとかバランスを保った。

少し乱暴で突然の激しさに 目を閉じることも 曖昧に……シンの勢いに逆らえない。

いつもより 強めの唇に 逆らえない。
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