No border ~雨も月も…君との距離も~
怒り……じゃない。

怒りより……愛情。

「 私にとって……シンというボーカリストは希望なの。
救世主(メシア)……。
そう言えるほど 大切だって、言ったはずだよ。」

「 夏香さん。私にだって……ashは夢です。」

愛情……? 私だって 負けてない。

「 そんなに簡単に言わないでくれるっ。
夢の レベルを下げないでっ!!
あなたに、シンは 似合わないっ。」

夏香さんは そう言った後に、ハッとした表情をして 自分で自分を落ち着ける為の、大きな息を肩から吐き出した。

「 夏香さんっ…それは ひどいよ…。
それは、無いよっ!」

「 鈴ちゃん、いい。……平気。」

シンに、私は 似合わない。

それは、私が一番そう思ってる。

だから、平気。

特別じゃない私だから……何一つ、特別なものが無い私だから……

なぜ……シンと一緒にいるのか、未だに不思議に思う時がある。

もしかしたら、神様は 何も無い私に シンという特別を少しだけ…貸してくれたのかと思う時がある。

夏香さんは、間違っていない。

「 夏香さん。
私にとっても、シンは……夢なんです。
似合わないからこそ……夢なんです。」

特別に何も無い私だけど……彼を想う気持ちは もう、夏香さんに負けないつもりでいた。

「 ダメだと言われても……
世界一のファンだから。
ファンは、皆……そう思って応援してる。」

「 …………シンを、潰さないで。
それだけ。」

潰れないよ。

ashもシンも……私 なんかの存在の為に 壊れたりなんかしない。

絶対に。


その晩、鈴ちゃんから ラインが入った。

“ 夏香さんに 言い返した、紗奈…。

ちょっと、かっこよかったよ!

変わったね。

数ヵ月前に、不倫の恋に迷ってた紗奈とは 別人に見えた。

本当に…シンの彼女になったんだね♡ ”

ありがとう。鈴ちゃん…。

傷ついてばかりは いられない。

それ以上に シンのことが好きだから。

だから……平気。

傷だらけになっても、立って前を見るよ。

好きになるって……不安になって、弱い自分にいつも もどかしくなる。

けれど、好きになるって……相手を思えば 強くなる。

強くなれるんだ。
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