No border ~雨も月も…君との距離も~
「紗奈ぁー。明日のashの ライブ、バイト 出れるよね?!」
今夜も バイト中の 鈴ちゃんからだ。
ashと聞いて、少し動揺する。
思わず……くわえていた箸を 落としたりして。
「あ~。 うん。明日だっけ 、別にいいけど。」
ホントは、ライブのことは チェック済みのくせに……私って たまに、素直じゃない。
「ねぇっ……。シン……。禁煙してて イラついてるってさっ!(笑) 可愛いとこあんじゃーんっ!
タクの情報だけどね~。
本気って……ホントだったんだねっ。」
鈴ちゃんの 冷やかすような口調に、ドキッとして
シンの “俺、本気だよ。”っていう 顔を 思い出してしまう。
「本当に、シンと付き合っちゃえばっ!」
スマホ越しの 人の気配に 小声で話す、鈴ちゃんの言葉に 耳まで熱くなった。
目の前に、鈴ちゃんが いなくてよかった。
赤くなっているのが、バレる。
「で、でも……シンは 確か彼女いるはずだよね。
鈴ちゃんだって 知ってるでしょ。
あの……ゴスロリ調の……フランス人形みたいな子。」
「あぁ~。カオリちゃんのことね。
んーーーー。これも タク情報だけど……3ヶ月くらい前に 別れたらしいよ。」
「3ヶ月って……。そんなに簡単に次に、行けるのかな。
しかも。……たまたま 居合わせた 私を、手っ取り早く……コレにしました。みたいな……シチュエーションでしたけど。」
「でもさ。紗奈だって……相当だよ。(笑)
“乗りかえてやるーーーー”って。(笑)
そっちの方が、軽いんちゃう?」
そっ……か。そうだ。
シンに 噛みつけるほど、私って 正義じゃない(泣)
不倫を 自分で 終わらすことが出来ず……イケメンに偶然(?)声をかけられ 舞い上がったりしている 自分に……やっぱり、たぶん……
心なしか荒れていた。
ビール……1本じゃ 足りなかったかも……(涙)
「ねぇ。鈴ちゃん……。
私って、カオリちゃんとは 全く違うジャンルだよね。」
丁度 真正面にある 姿見に映る自分を覗きこむ。
「(笑)あっーーーー。気にしてるっ!」
「そんなんじゃなくてっ!」
「まぁ、ズバリ真逆だよね(笑)
甘口と辛口くらい違うっ! 甘いのに飽きたんじゃないっ?はははー!」
「笑えないよぉ。」
私は、スマホ越しの 鈴ちゃんに 口を尖らせた。
3ヶ月前……? 9月の下旬頃まで。
言われてみれば そうかもしれない。
夏が過ぎた頃から カオリちゃんは、パタリとBIG4に顔を 見せなくなった。
ashの スタジオ練習が入っている日、たまに
カオリちゃんは シンを迎えに BIG4にやって来た。
練習が終わって、 雑談したり メンバーとふざけ合ったり するシンが……ふっと時計に目をやり、
スマホをいじる。
しばらくして 彼女はスッと現れて、 私たちスタッフに目を合わせることもなく 小さいお辞儀だけを残して、シンと消えた。
シンと同じ…… 香水。
全部が 小さくて細くて……
まるで生きている お人形さんのような子。
大きくて、ぱっちりした どんぐり目。
血液が 透けて見えるのでは?と心配するほどの白い肌。
モフモフのベビーピンクの スウェットは、肩幅のない彼女が着ると 何かの拍子に そこから滑り落ちそう……。
無造作にアップした 艶のある アッシュブラウンの髪が 白いうなじの曲線に垂れて、輪郭から分かる胸は たぶん……私より3カップくらいは上。
胸の谷間の始まりで 止まっているファスナーの中身を……女子の私でも、つい妄想してしまう。
持っているオーラも、付属しているものも……
カオリちゃんは 女を敵に回して生きている。
柔らかさと……甘さと……ちょっとの色っぽさが
敵を 作る。
けれど、何がどうあれ……女を 全面に強調して生きている彼女は、シンを手に入れていた。
ashのライブの日には、黒のゴスロリだったり……。白や淡いピンクをベースにした 甘ロリだったり。
ホントに、息をしている 人形。
シンの好みを、一瞬 疑いつつも……可愛いから
分かる……。
悔しいけれど、あのロリータという幼稚的フォルムから放たれる、守ってあげたい空気感には
敗北すら 感じる。
あ~ーーぁ。イラついてきた。
あの完成度の高い 作り込まれた美少女と、
最近は、まつ毛も 着けてない 素の自分に どうしたらバランスが取れるのか……無駄に悩む。
明日。化粧、ちゃんとして行こう。
恋心?女心? わからないけれど……
少しでも、ほんの少しでも…可愛いって思われたい。思って欲しい。
そう……思った。
「ねぇ。鈴ちゃん……やっぱり、私 シンに からかわれているのカナ。……?」
スマホ の向こう側……。
鈴ちゃんは、返事を 濁したような気がした。
今夜も バイト中の 鈴ちゃんからだ。
ashと聞いて、少し動揺する。
思わず……くわえていた箸を 落としたりして。
「あ~。 うん。明日だっけ 、別にいいけど。」
ホントは、ライブのことは チェック済みのくせに……私って たまに、素直じゃない。
「ねぇっ……。シン……。禁煙してて イラついてるってさっ!(笑) 可愛いとこあんじゃーんっ!
タクの情報だけどね~。
本気って……ホントだったんだねっ。」
鈴ちゃんの 冷やかすような口調に、ドキッとして
シンの “俺、本気だよ。”っていう 顔を 思い出してしまう。
「本当に、シンと付き合っちゃえばっ!」
スマホ越しの 人の気配に 小声で話す、鈴ちゃんの言葉に 耳まで熱くなった。
目の前に、鈴ちゃんが いなくてよかった。
赤くなっているのが、バレる。
「で、でも……シンは 確か彼女いるはずだよね。
鈴ちゃんだって 知ってるでしょ。
あの……ゴスロリ調の……フランス人形みたいな子。」
「あぁ~。カオリちゃんのことね。
んーーーー。これも タク情報だけど……3ヶ月くらい前に 別れたらしいよ。」
「3ヶ月って……。そんなに簡単に次に、行けるのかな。
しかも。……たまたま 居合わせた 私を、手っ取り早く……コレにしました。みたいな……シチュエーションでしたけど。」
「でもさ。紗奈だって……相当だよ。(笑)
“乗りかえてやるーーーー”って。(笑)
そっちの方が、軽いんちゃう?」
そっ……か。そうだ。
シンに 噛みつけるほど、私って 正義じゃない(泣)
不倫を 自分で 終わらすことが出来ず……イケメンに偶然(?)声をかけられ 舞い上がったりしている 自分に……やっぱり、たぶん……
心なしか荒れていた。
ビール……1本じゃ 足りなかったかも……(涙)
「ねぇ。鈴ちゃん……。
私って、カオリちゃんとは 全く違うジャンルだよね。」
丁度 真正面にある 姿見に映る自分を覗きこむ。
「(笑)あっーーーー。気にしてるっ!」
「そんなんじゃなくてっ!」
「まぁ、ズバリ真逆だよね(笑)
甘口と辛口くらい違うっ! 甘いのに飽きたんじゃないっ?はははー!」
「笑えないよぉ。」
私は、スマホ越しの 鈴ちゃんに 口を尖らせた。
3ヶ月前……? 9月の下旬頃まで。
言われてみれば そうかもしれない。
夏が過ぎた頃から カオリちゃんは、パタリとBIG4に顔を 見せなくなった。
ashの スタジオ練習が入っている日、たまに
カオリちゃんは シンを迎えに BIG4にやって来た。
練習が終わって、 雑談したり メンバーとふざけ合ったり するシンが……ふっと時計に目をやり、
スマホをいじる。
しばらくして 彼女はスッと現れて、 私たちスタッフに目を合わせることもなく 小さいお辞儀だけを残して、シンと消えた。
シンと同じ…… 香水。
全部が 小さくて細くて……
まるで生きている お人形さんのような子。
大きくて、ぱっちりした どんぐり目。
血液が 透けて見えるのでは?と心配するほどの白い肌。
モフモフのベビーピンクの スウェットは、肩幅のない彼女が着ると 何かの拍子に そこから滑り落ちそう……。
無造作にアップした 艶のある アッシュブラウンの髪が 白いうなじの曲線に垂れて、輪郭から分かる胸は たぶん……私より3カップくらいは上。
胸の谷間の始まりで 止まっているファスナーの中身を……女子の私でも、つい妄想してしまう。
持っているオーラも、付属しているものも……
カオリちゃんは 女を敵に回して生きている。
柔らかさと……甘さと……ちょっとの色っぽさが
敵を 作る。
けれど、何がどうあれ……女を 全面に強調して生きている彼女は、シンを手に入れていた。
ashのライブの日には、黒のゴスロリだったり……。白や淡いピンクをベースにした 甘ロリだったり。
ホントに、息をしている 人形。
シンの好みを、一瞬 疑いつつも……可愛いから
分かる……。
悔しいけれど、あのロリータという幼稚的フォルムから放たれる、守ってあげたい空気感には
敗北すら 感じる。
あ~ーーぁ。イラついてきた。
あの完成度の高い 作り込まれた美少女と、
最近は、まつ毛も 着けてない 素の自分に どうしたらバランスが取れるのか……無駄に悩む。
明日。化粧、ちゃんとして行こう。
恋心?女心? わからないけれど……
少しでも、ほんの少しでも…可愛いって思われたい。思って欲しい。
そう……思った。
「ねぇ。鈴ちゃん……やっぱり、私 シンに からかわれているのカナ。……?」
スマホ の向こう側……。
鈴ちゃんは、返事を 濁したような気がした。