No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 どうしよ。紗奈……。
珍しく……って、いうか シンと翔平君が、ケンカしてるの、初めて見た……。」

携帯越しの 鈴ちゃんが、心配そうに声を潜めた。

今日は、BIG4のバイトは、おやすみ。

鈴ちゃんだけが 出勤していた。



スタジオ練習前の 和やかなBIG4のロビー。

いつもの風景……シンとタクちゃんが、くだらない事で笑い合う。

ホント、どーーでもいい 2人の下ネタに 苦笑しながら 鈴ちゃんは扉の開く音に、振り返る。

「あっ……翔平君、お疲れ様で~す。」

ア……レ。?

いつもと少し違う 翔平君の表情に…鈴ちゃんは
首を傾けて……覗き込む。

神妙な顔つきで、ギターやエフェクターのハードケースを 淡々と運ぶ 翔平君が……いつもと違う。

「 ……ぶっはっは(笑) マジで~ははっ……あっ!
翔平、悪いっ!!」

タクちゃんとふざけ合っていた反動で、長椅子に立て掛けた ギターがハードケースごと倒れた。

バコーーンと鈍い音。

シンは、まだ タクちゃんとの笑いを堪えながら、ギターを元の位置に戻そうと、手を伸ばす。

「 ごめん。翔平。」

「 ……触んじゃねぇーーよっ!」

普段、優しい翔平君が……そのくらいの事でキレることはない。

とても、大切なギターであっても……

翔平君は、そういう人だ。

……が、その日は少し様子が違っていたようだ。


「 調子こくんじゃね~よっ。」

翔平のトーンの低い声が、シンに向かって響く。

「 あ“ん……?なんつった、今。」

もちろん、その一言でシンの感情の針が 一気に振り切れる。

「 悪いって……謝ってんじゃん。」

謝りつつも、反発心 剥き出しのシンに 翔平は黙って背を向ける。

「 翔平君、ごめん。僕も……ふざけ過ぎてた。」

タクも、長椅子から立ち上がって シンをフォローするかのように、すまなそうな顔をする。

そんなタクに 目も合わせず、プイッと首を横にする 翔平の肩を掴んだシンは、彼の身体をこっちへ向けようとする。

「 翔平……?」

「 うるっせぇ! 離せやっ。」

あまりにも いつもと違う翔平に、シンの表情も いよいよ本気で固まる。

「 あっ!ねぇ……ちょっと、二人とも……」

鈴ちゃんが カウンターから出てきて、2人の間に入ろうとする。

翔平は 大きなため息を吐くと、シンを睨んだ。

「 シン……表、出ろやっ!」

「 あ“ぁん?! 言いたい事があるなら、ここで言えよっ。」

「 シン……お願いっ。ちょっと、落ち着こう……。」

鈴ちゃんが、シンの服の袖を 引っ張る。

「 いいからっ。 表、出ろやっ!」

翔平は、なおも声を荒げた。

…………らしくない。




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