No border ~雨も月も…君との距離も~
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鼻歌を歌いながら 上がりっぱなしの シンは、ご機嫌で ハンドルを握って リズムをとる。

その横顔に 私も単純に嬉しくなる。

私とシンが、今日1日の逃亡を企てている最中…… 昨晩、鈴ちゃんから着信があった。

「 どうしよ……紗奈。
珍しく……って、いうか シンと翔平君がケンカしてるの……初めて見た。」

シンと翔平君が 揉めていた事を 聞いた。

シンが、私の追求に お茶を濁すところを見ると、ケンカの内容は 私にも関係するのかもしれない。

女の感。

翔平君も、私との事で 有ること事、無いこと……いや?全く 無いことを書かれて いい気はしていないだろう。

揉めても 仕方がない。

怒っても 仕方がない。

シンは 携帯をケーブルから外して……カーステにashのセカンドCDを 飲み込ませた。

インディーズ レーベルのCD。

ジャケットは、美大生のタケル君が デザインしたものだ。

「 この曲……翔平君のギターのリフ、めちゃくちゃカッコいいよね。」

「 うん。……そう! アイツは天才。
翔平の才能は、持って生まれて来ただけじゃなくて……ホント努力家なんだよなぁ~。
研究して…計算もされてる。」

「 タケル君…ドラムだけじゃなくて、デザインの才能もあるんだね。
センスいいもんね。
あと…タクちゃんのベースソロ…ヤバいよね!
私、すごい好きっ! カッコいいっ!!」

「 うんっ!!
………………。で。」

「 …………へっ? 」

「 ………………で。」

「 ………………?? 」

「 ……だぁあ!そんだけ~っ!!俺はぁーー(笑) 」

「 あーー(笑)忘れてたっ。はい、はい。(笑)
シンが いちば~~ん 天才っ!」

「 ちぇっ!なあんだよ、ソレ。」

赤信号で 車を止めて スネるシンが、面白くて 思わず声に出して笑ってしまう。

私とシンは、2人でケラケラ笑いながら 金沢を離れて、私の生まれ育った能登へ向かって 車を走らせた。

逃亡 決行!!

眩しいほどの 晴天。

金沢を離れるほど 右手に 緑。 左手に海。

流れる木々の間から チラチラ見える波は、白く輝き…柔らかな鼓動のように 打っては浚ってを繰り返す。

まるで 生きているような 波。

窓を開けたくなって 2人で全開に開け放つ。

“ 里山海道 ”の限界速度のスピードに、私は髪を押さえながら…息の仕方を考える。

「 俺……翔平ほど、尊敬する男っていないかもなぁ~。」

シンは、真っ直ぐに フロントガラスを見つめながら 風に負けまいと 声に力を込めて話す。
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