No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 はい。塩ソフト、1つ。 おつりね~。
お兄ちゃん…俳優さんかね?
わかるんよぉ!!なんかねぇ~ 雰囲気ちゅーか…ねぇ~。 美男子には敏感なんや~(笑)」

「 まさかっ。(笑) ありがとうございます!」

「 ホラなぁ~。そういうのなぁ!
顔、褒めると……“ありがとうございます!!”言うねん!! 否定せんねんなぁ~。どこの事務所の子やの~?」

「 ち……がいますって。(苦笑) 」

「 あっ!ココ穴場のパワースポットだから……
ほら、お忍びで来るんだわぁ~。芸能人カップル!」

「 めちゃくちゃ違いますけど……(汗)
パワースポットかぁ……。へぇ~。
いいッスね。 なんか……そんな気を感じてきました。(笑) 」

磯の香りのする売店の窓からは、真っ青な空。

波が岩にぶつかる気配を 微かに感じる。

「 感じるでしょ~。海の女神のパワー!
お兄ちゃん…ここらに置いとくの勿体ないわぁ~。私、お兄ちゃん、俳優やったら、ファンになるで~。」

「 マジっすか。(笑) 俳優……考えときます。(笑)」

売店のおばちゃんと……何やら盛り上がっているシンを置いて、私は塩ソフトを スプーンで削りながら 海に繋がる展望デッキに向かう。

空を突き抜けるように、真っ直ぐ伸びる 展望デッキ……

この先は……空へと続くのか? 海へ繋がるのか?
磯の風に混ざって、春の匂いがする。

一歩 一歩…デッキの先端へ。

引き込まれるような、何か強い力に身体を獲られそうになる。

デッキの終りに着くにつれて、足元が風に騒いで……微かな揺れを感じる。

眼下の コバルトブルーには……確かに 岬の力が宿っている。

それほどに……深い 深いブルー。

「 落とすなよっ!! 塩ソフトっ!(笑) 」

私は、シンの声にハッとして 手元のソフトクリームを確認する。

「 (笑) もうっ! びっくりするじゃん。」

シンは 笑ったまま 無邪気に私の背後から腕を回してくる。

両腕で 私を包むようにして……デッキの柵に両手を掛ける。

「 一人で食べる気? ハイっ 俺もっ!」

そう言って、シンは口を開けて 食べさせろ とねだる。

「 (笑)……ハイっ! 」

私は、シレッと笑う。

「 あ“っ!! 冷たっ。 入れすぎだろっ(笑)
マジ…かよぉ~。」

「 (笑) ははっ……(笑) 口の横っ。
ついてるっ、ついてるっ!!(笑) 」

指で 口の周りを あちこち拭きながら笑う 綺麗なシンの横顔は、春の陽射しが反射すると益々……

キレイ……。

コバルトブルーの海も シンの前では、やっぱり……景色の一部にしかすぎないように思う。

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