No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 あの バカっ。信じらんないっ!! 」

夏香は、イラつきながら 何度も通話ボタンを タップする。

「 今日は、来ないつもりなんじゃねっ。」

翔平が ギターのチューニングをしながら、あっさり答えを言う。

「 そんなこと……デビューして通じると思ってんのっ。シンはっ!! 」

「 ほっときゃ……明日、“ 悪りぃー” とか言って帰って来るっしょ。」

と、言って タケルは バスドラを連打しつつ、スネアの位置を確認する。

「 ですね。 ほっときましょう 」

と……タクもアンプをいじりながら 夏香に微笑みかける。

こんな時でも…爽やか……。

「 なんなのっ!!この、ノーテンキバンドっ!!
信じらんないっ。
こーんな バカ達と、私…東京 行くわけぇ。
バッカみたーーいっ!! 」

「 あ…………。バカっつたぁ~。」(タケル)

「 バカの連打……でしたね。」(タク)

「 達って………言ったよな。 バカ達って」(翔平)

夏香は サラサラの黒髪を くしゃくしゃと掻き乱して、ため息を 吐いて 呆れる。

「 そもそも…ashって、リーダー誰?
ちゃんと、あのバカに注意しとかなきゃ……。」

タケルとタクは…翔平をチラ見する。

「 俺?!……俺、忙しくね?
楽曲 担当でしょ。」

翔平は、ワザと惚けた顔をする。

タクが、タケルを 指差す。

「 うぇ~い。うそっ!? 」

「 タケルさんってことで……。」

「 …! シンっ。
あいつに しとこーぜ。今日、さぼったバツっ!
…って、無理…だな。
あの、どマイペース……。
マジで。 俺ぇ??」

「 ったく……。信じらんないっ。リーダーもいないバンドなんて……呆れすぎる…(涙)
そして、皆…シンを野放しにしといていいの? 」

「 まぁ……それが、シン。」

「 ……だと、思います。」

「 俺は……昨日、それなりに言ったつもりだし。
で…………。 今日、欠席。」

「(苦笑) 」

「(苦笑) 」

「(苦笑) 」

「 翔平。 ソレでいいの? たぶん、紗奈ちゃんと一緒だよ。」

「 俺、煙草…行ってくるわぁ。どうせ、
先に…ドラムとベース、録るでしょ……。」

「 ………翔平っ!……もうっ。」

ZiPPOのフタをいじりながら ホールを出ていく翔平の後ろ姿に、夏香は 肩をすくめて ため息をつく。

そして もう一度、スマホを確認しつつ……

黒塗りの壁に 寄りかかる。




吐きそう……。

嫌すぎて、気持ちが悪くなってくる。

想像するだけで……頭がおかしくなりそう。

私じゃない誰かに 触れるその手が…許せないよ。

嫌。

吐きそう……

嫌。

シン………

電話に、出てっ!!

お願い………今すぐ………出て………



夏香は、通話ボタンを狂ったように タップした。




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