No border ~雨も月も…君との距離も~
*・゚゚・*:.。..。.・゚・*:.。. .。.・゚゚・*
海辺の民宿の入口に “ 素泊まり歓迎 ”の看板を見つけて 車を停めた。
これといって 何の特長もない 簡素な和室に案内されたが、海の見える窓だけは やたらとワイドで 荷物を置くと 思わず 、目の前に広がる夕陽のパノラマに吸い寄せられた。
数分も立たないうちに……部屋全体に夜の気配が訪れる。
夕陽に薄く浮かんでいた 上弦の月が みるみる……
色濃くなる。
穏やかな 夜への足音。
窓の外からは…波音と、砂が転がり合う音。
内浦の海は 優しく…静かに2人の時間をくれた。
シンは 新しくはない畳に足を投げ出して 寝転ぶと、私の膝に頭をのせて…黙ってこっちを見つめた。
私の前髪に触れる シンの細くて長い指に……自然と瞳を閉じる。
空気中のミクロレベルの異物も、全部どこかに消えて……純度の高い空気がここにはある。
上下を繰り返す……シンの胸板。
たまに動く……喉仏。
純度の高い、好きと……
ピュアな切なさに…… 噎せかえる 夕暮れ。
パワースポットでの充電は、私にも少し力をくれたのかもしれない。
分からない未来と
分からない恋の行方を 受け入れる 勇気。
そして……
シンの 心の底にある孤独を 受け入れる 強さ。
シンは、月明かりから目を逸らして 呟くように話し始める。
「 俺……。月が 怖いんだ。」
「 ……月? 月って……あの、月?」
私は 窓へと 視線を向ける。
輝く 半月……。
「 うん。 月がさっ……俺を見てるんだ。
見る……じゃなくて、見張られてるっていうのかな……。
すげぇー怖い顔で。」
「 ………シン………。」
「 かと…思ったら、今度は すごく哀しい顔で……俺の肩を 叩くんだ……。
そのうちに、あの空から堕ちてきて 全てを壊してしまう……。
そんな気になる。」
「 ………………。」
「 力が……抜けてしまうくらい 怖い……。」
「 ……守ってあげるよ。
大丈夫………シンが、安心して眠るまで 私がついててあげる……。」
シンは、フッと笑って 私を見つめる。
「 俺の母さん…満月の夜に 死んだんだ。」
「 ………………。」
「 父さんが浮気したから、当て付けに死んだんだよっ!」
「 ………シン。」
シンは 無表情のまま…私の前髪に触れては、そこではない どこか遠くに、手をかざしているように見えた。
海辺の民宿の入口に “ 素泊まり歓迎 ”の看板を見つけて 車を停めた。
これといって 何の特長もない 簡素な和室に案内されたが、海の見える窓だけは やたらとワイドで 荷物を置くと 思わず 、目の前に広がる夕陽のパノラマに吸い寄せられた。
数分も立たないうちに……部屋全体に夜の気配が訪れる。
夕陽に薄く浮かんでいた 上弦の月が みるみる……
色濃くなる。
穏やかな 夜への足音。
窓の外からは…波音と、砂が転がり合う音。
内浦の海は 優しく…静かに2人の時間をくれた。
シンは 新しくはない畳に足を投げ出して 寝転ぶと、私の膝に頭をのせて…黙ってこっちを見つめた。
私の前髪に触れる シンの細くて長い指に……自然と瞳を閉じる。
空気中のミクロレベルの異物も、全部どこかに消えて……純度の高い空気がここにはある。
上下を繰り返す……シンの胸板。
たまに動く……喉仏。
純度の高い、好きと……
ピュアな切なさに…… 噎せかえる 夕暮れ。
パワースポットでの充電は、私にも少し力をくれたのかもしれない。
分からない未来と
分からない恋の行方を 受け入れる 勇気。
そして……
シンの 心の底にある孤独を 受け入れる 強さ。
シンは、月明かりから目を逸らして 呟くように話し始める。
「 俺……。月が 怖いんだ。」
「 ……月? 月って……あの、月?」
私は 窓へと 視線を向ける。
輝く 半月……。
「 うん。 月がさっ……俺を見てるんだ。
見る……じゃなくて、見張られてるっていうのかな……。
すげぇー怖い顔で。」
「 ………シン………。」
「 かと…思ったら、今度は すごく哀しい顔で……俺の肩を 叩くんだ……。
そのうちに、あの空から堕ちてきて 全てを壊してしまう……。
そんな気になる。」
「 ………………。」
「 力が……抜けてしまうくらい 怖い……。」
「 ……守ってあげるよ。
大丈夫………シンが、安心して眠るまで 私がついててあげる……。」
シンは、フッと笑って 私を見つめる。
「 俺の母さん…満月の夜に 死んだんだ。」
「 ………………。」
「 父さんが浮気したから、当て付けに死んだんだよっ!」
「 ………シン。」
シンは 無表情のまま…私の前髪に触れては、そこではない どこか遠くに、手をかざしているように見えた。