No border ~雨も月も…君との距離も~
「 いつも 鼻唄なんか唄ってさっ…死ぬなんて思わないじゃん。
俺、何も 知らなくて……何も 分かってやれなくて……ガキすぎて 気づいてやれなかった。」
「 シンの……せいじゃないよ。」
「 “どうした?”って 言葉の ひとつも掛けてやれなくて……助けてやれなくて。
突然……俺の前から いなくなった。」
月の夜に いなくなった。
俺と生きることより……父に恨み事を言う前に……
母さんは 死んだんだ。
淡々と話す、シンの果てしない哀しみと深い傷に、たまらなくなる。
苦しさが たまらない。
「 今でも 救急車のサイレンが……音階になって、俺に 迫って来る時が あるんだ。
無機質な周波数が、月とリンクして……
大切な人を連れ去ってしまうんじゃないかって。
紗奈まで 俺の傍から消えてしまったら…って、
月に…逆らえない 自分が嫌いだよ。」
シン…………。
私は、
そんな シンを置いて、消えたりなんかしない。
私は、
消えないよ。
もしも……月に叱られて ひどく傷ついてしまうなら、私が代わりに謝りに行くよ。
それとも…シンの代わりに、月に 反発するよ。
月に、逆らってあげるよ。
その晩、シンは二つの布団があるにも関わらず、
私と同じ布団に踞って 子供のような寝息を立てていた。
いつか……今以上に 大人になって 変われる。
変わってしまう シンを、私はきっと誇らしく思って……そしてきっと、
哀しく思う。
いつか……夜の月を、克服したシンを見たいと思う。
けれど……それは私達の関係ですら 変えてしまうのではないかと…思うと、
怖い。 怖いと思う。
シンは、朝日があれば 私を求めてくれた。
月が姿を消せば……足枷と手錠は、外れる。
その…罪悪感は、彼の罪ではないのに。
その手と声と…唇に 溶けそうになる。
その……罪は、半分 私のモノでいい。
私の身体いっぱいに シンが溢れる……。
罪悪感からも…月からも…シンと一緒なら、また逃げるよ……。どこへでも。
そして、シンは インスタのコメント蘭をしばらく閉じることにした。
炎上がおさまるまで……。
「 僕の傍にいる人を、僕は全員…大切にしたい。誰か一人でも 哀しく思うなら それは僕が失格だったね。 皆さんの心に寄り添える歌を、歌える自分になれるように…」
シンは笑って …スマホの着信音をオフにする。
軽く鼻で笑って 0.5秒ほどためて、口角を上げる。
そして……ケラッと笑う。
夢のような逃亡から…目を覚まさなくてはいけない。
俺、何も 知らなくて……何も 分かってやれなくて……ガキすぎて 気づいてやれなかった。」
「 シンの……せいじゃないよ。」
「 “どうした?”って 言葉の ひとつも掛けてやれなくて……助けてやれなくて。
突然……俺の前から いなくなった。」
月の夜に いなくなった。
俺と生きることより……父に恨み事を言う前に……
母さんは 死んだんだ。
淡々と話す、シンの果てしない哀しみと深い傷に、たまらなくなる。
苦しさが たまらない。
「 今でも 救急車のサイレンが……音階になって、俺に 迫って来る時が あるんだ。
無機質な周波数が、月とリンクして……
大切な人を連れ去ってしまうんじゃないかって。
紗奈まで 俺の傍から消えてしまったら…って、
月に…逆らえない 自分が嫌いだよ。」
シン…………。
私は、
そんな シンを置いて、消えたりなんかしない。
私は、
消えないよ。
もしも……月に叱られて ひどく傷ついてしまうなら、私が代わりに謝りに行くよ。
それとも…シンの代わりに、月に 反発するよ。
月に、逆らってあげるよ。
その晩、シンは二つの布団があるにも関わらず、
私と同じ布団に踞って 子供のような寝息を立てていた。
いつか……今以上に 大人になって 変われる。
変わってしまう シンを、私はきっと誇らしく思って……そしてきっと、
哀しく思う。
いつか……夜の月を、克服したシンを見たいと思う。
けれど……それは私達の関係ですら 変えてしまうのではないかと…思うと、
怖い。 怖いと思う。
シンは、朝日があれば 私を求めてくれた。
月が姿を消せば……足枷と手錠は、外れる。
その…罪悪感は、彼の罪ではないのに。
その手と声と…唇に 溶けそうになる。
その……罪は、半分 私のモノでいい。
私の身体いっぱいに シンが溢れる……。
罪悪感からも…月からも…シンと一緒なら、また逃げるよ……。どこへでも。
そして、シンは インスタのコメント蘭をしばらく閉じることにした。
炎上がおさまるまで……。
「 僕の傍にいる人を、僕は全員…大切にしたい。誰か一人でも 哀しく思うなら それは僕が失格だったね。 皆さんの心に寄り添える歌を、歌える自分になれるように…」
シンは笑って …スマホの着信音をオフにする。
軽く鼻で笑って 0.5秒ほどためて、口角を上げる。
そして……ケラッと笑う。
夢のような逃亡から…目を覚まさなくてはいけない。