No border ~雨も月も…君との距離も~
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「 紗奈ちゃんにお客さんっ!
ねぇ~! もしかして彼氏?? ?
めっちゃ…イケメンや~ん♡ 」

「 あ……(苦笑) スミマセンっ……(焦) 」

突然のことで、金網ですくった カラアゲを もう一度 油の中へ 落としてしまう。

「 ねぇっ!ちょっとぉー。
今度、紹介してよっ♡ 勝手口…教えといたからっ!! 」

ママは 私の肩を叩きながら、お客さんが店に入って来たことに気づいて…

「 はぁい! いらっしゃいませっ。」

とカウンターに向かいつつ、指でOKサインをくれた。

とりあえず カラアゲ達を 油から救出して、火を止めると、自分の服の 油臭さを クンクン確認しながら 勝手口の扉を開けた。

「 あ…………。」

「 ごめん。 紗奈ちゃん…。
仕事中なのに。 お店のオーナーさんかな?
裏に廻っていいって 教えてくれて…。」

翔平君は 照れくさそうに 弁当の入ったレジ袋を見せて

「 コレ、買いに。」 と笑った。

「 来てくれたんだっ。 ありがとう。(笑) 」

私は、少し気まずくて…正直、焦る。

翔平君の 大きくて真っ直ぐな 黒目を まともに見られない。

きっと…

「 コレ、買いに。」……は 嘘。

叱られる。 ……たぶん。

シンと レコーディングを放棄して、逃げた。

「 ……翔平君、昨日はごめんなさい。
皆、怒ってたよね…。
私が、シンに ワガママを ぶつけてしまって…。」

だから……本当に ごめんなさい。

私は、エプロンの裾を握ったまま…頭を下げる。

「 許さないよ。」

………………。だよね。

私は、いつもと違う 冷えた翔平君の声に 顔を上げられないでいた。

エプロンの裾……更に 力がこもる。

「 悪いのは……私 だから。
シンは、私に付き合ってくれただけで……
悪いことをしたなぁって…反省してるのっ。」

「 さっき……スタンドで シンに会った。」

「 えっ……そうなの?」

「 同じ事 言ってた。」

「 ………………。」

私は、やっと翔平君の顔を 真っ直ぐに見上げることができた。

「 紗奈ちゃんは自分のワガママに付き合ってくれただけだって……。」

「 あ………………。」

「 そんなに、シンのことが好き?」

翔平君の言葉が…何となく投げやりに聞こえる。

「 そんなに、シンを庇うの?」

翔平君の長めの前髪のせいで よく彼の表情が見えない。




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