No border ~雨も月も…君との距離も~
「 スゴいっ!翔平君ならきっとできるよっー!
翔平君が、作った曲なら 間違いないもん。
絶対、カッコよくなるっ!!」

私は つい素直に即答してしまった。

「 (笑) 紗奈ちゃんが…そう言ってくれるのなら…引き受けようかな。」

翔平君が 色々なジャンルの曲を聞いていて、たまにアコギで 鈴ちゃんと一緒に 歌っている姿を見ていた。

幅広いジャンルのカバーを すごく新しい曲のように…アレンジする。

ashとは違うジャンルの翔平君の曲を、素直に聴きたいと思った。

だから…迷わず 即答。

「 誰かに…軽く背中を押して欲しかったんだ。」

そう言って 翔平君は、はにかんだ。

「 ところで 紗奈ちゃんはこれから どうすんの?」

「 ……どう……って? 」

「 ash……てか、シンは東京に行くじゃん。」

「 ……うん。」

「 シンに……ついてくの? 」

「 私は……ここにいるよ。 金沢に。」

「 ………そっか。そうなんだ。」

「 私、シンに……っていうか、ashについて行けるものが、ひとつも無いから。
何ひとつ……ついて行けなくて…きっと戸惑う。……(笑)」

「 紗奈ちゃん……。」

私は、急に シンが傍にいなくなる 現実に胸が詰まった。

「 寂しくない?」

「 ………………寂しいよ。
寂しいけど……東京っていう大都会で、シンと一緒にいられない時間があるとしたら、
そっちの方が きっと、寂しい。
離れて一人より……傍にいて一人の方が ずっと寂しい。」

「 アイツのこと…好きなんだね。」

“ 好きだよ……” と、
返事をしたら 私の強がりのメッキが 剥がれてしまいそう……。

「 紗奈ちゃんは、強いね。」

強いんじゃない……。 自信がない。
今以上に、カッコよくなっていくashに 自分がついて行けるのか……自信がない。

「 どんなにね、この先……
シンが 変わったとしても……
私は……私でいたいんだよね。」

私は、私のままでいたい。

「 (笑) やっぱり…強いよ。 紗奈ちゃんは。
そういうの……好きかな。」

俺も……アイツも。

桜の 花弁を狂い散らせる春の強めの風が、私と翔平君の間を 通り抜けた。

私は、髪を耳元で押さえる。

“ 強いよ。 紗奈ちゃんは。” ……の後、
彼が何を呟いたのか、聞き取れなかった。


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