No border ~雨も月も…君との距離も~
「それから…インスタのコメ、気にすんなよっ! 夏香さんとシンのことは……もう安心して大丈夫だから。 俺達から見ても、2人とも ……整理がついてるし 。」

「…えっ?」

春風は 少し意地悪で…暖かいかと思ったら、冷たく通りすぎる時もある。

「 ……あ…? アレ……。
ヤベっ! 聞いてなかったの?」

翔平君が 本気で焦った顔をする。

「 何? 整理がついてるって……。」

翔平君は あからさまに困った表情で、私から目を逸らすと……しばらく 黙った後、“ ごめん ”と謝った。

「知ってると思ってた。夏香さんは シンの元カノでさ……。
シンにとっては 特別なんだ。」

「 …………特別…?」

「夏香さんは、シンの熱烈なファンでもあったから……シンのやんちゃなファンの子達を統括してたっていうか……。」

「 …………。」

「 シンの夢の為なら……って、東京でマネージメントの勉強したっていう…。
愛情…半端ねぇ~って、同時は思ったけど…
ファンの子以上に 本人はやんちゃだし……今以上に 自由だったし…。」

紗奈ちゃんが……SNSで ビッチ呼ばわりされるのも……わかるっていうか。

翔平君の話の途中から……春風に酔いそうになってきた。

春の目眩。

噂と確定は……ずいぶん違う。

私は……強くなんかない。

寂しさと……不安と……信頼……

目眩の中で 私は、私のままで……いられるのか?不安になるよ。

「 でもさ……。アイツ、変わったよ。
ここ数ヵ月で、落ち着いた。 」

私の知ってる シンは……とても繊細でピュア。

月に怯えるくらい……純粋。

けれど、それと同じくらい 夏香さんの瞳も、真っ直ぐで……情熱的で……

残酷なほどに、私を不安にさせる。

胸の痛みが、身体中に浸透した。
まるで、炭酸水の泡のように…シュワッと 胸の奥で 気化していくのが わかる。

「 紗奈ちゃ~んっ!ごめ~んっ。電話っ!出てくれるっ。」

ママの声に、ハッとして 私は慌てて仕事に戻った。

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