No border ~雨も月も…君との距離も~
「 洋介さんって……?」

「 アレ?タクって 知らなかったんだぁ。
まぁ……知るわけないわなぁ。
俺も人から聞いただけだし……どこまでホントの話か知らねぇけど……。」

タケルは、手にもっていたドラムのスティックをクルクル指で回しながら 話す。

昔、25年ほど前になるのかな……。

金沢にいた4人組。

それぞれが 才能のある人達で……

結局……一緒にバンドを組むことは なかったんだけど、4人で 金沢に初めて、ライブハウスとスタジオを作った人達が いたんだ。

BIGな4人が 作ったから、

“ BIG 4 ”

「 ……なっ! シン。」

「 あ…………ん? そーだっけ。」

「 BIGな4人で……BIG4。
そのまんまっスね(笑) 」

「 その一人が、洋介さん。
俺たちの レコード会社のプロデューサーの一人だよ。」

「 へぇ~!! すげぇーーーー!!
金沢の人 だったんですね。」

「 ……で。4人のうちの もう一人がBIG4の店長の小川さん。それから もう一人……… 」

「 翔平っ。 もういいじゃん……早く 練習 始めようぜ。」

シンは ジャケットを、半分脱ぎながら 長椅子から立ち上がる。

「 シンの、お父さんだよね。」

夏香は 事務所から そう言って出てくると、シンの肩に軽く触れた。

「 おい……。 いいって。」

「 “ 絶対音感 ”を持ってた……っていう、名ギターリスト。
シンの センスもそこからでしょ。
感謝しなきゃ~! 」

「 やめろって……!
俺は、絶対音感なんて 持ってねーし。
アイツなんかと 一緒にすんなよ…。」

「 シン君の親父さんって、すげぇー人なんですね。しかも……ギター、弾くなんて…初耳ッス。
なんで言ってくれなかったんですかぁ~。」

「 関係ねぇーよっ。」

「 シン。 だからって…自分の才能に 胡座をかくのはやめてよ……。
デビューして、レコーディング ぶっちなんて…
あり得ないっ。
アーティストだからって、一社会人としての自覚がないと …ワガママは 傲慢だと思われても仕方ないんだからっ……。
私……この前のこと、許してませんからっ。」

そう言って、夏香は シンを睨むと 忙しそうにBIG4の外へと 出て行った。

「 …………(汗) ……はいっ。」(シン)

「 やっぱ……一番の御立腹は 夏香様だなぁ。
尾……引いてるわぁー。(汗) 」 (タケル)

「 怖ーーーー。(苦笑) 」(タク)

「 敵に 回したくねぇーーーー。終わってねぇ~(青) 」(翔平)

「 ……ちゃんと、謝れって 言ってる気がする。(怯) 」

シンは お手上げポーズで、夏香の後を追った。


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