雪原の蛍
とある山頂、辺りは一面の銀世界―――
のはずだが、すっかり日も沈んだこの時間ではせいぜいほの白く地面がうっすらと光っているのがわかるくらいだ。
あとは星空を背景に、人も木々もまるで切り取られた影絵のように黒く浮かびあがっているばかり。
その影絵の中に小さな赤い光が灯る。数秒明るくなり、一瞬ののち……白い煙が流れて夜空に消えた。
「ミイナ、そろそろ行くよ?」
「…了解」
仲間に呼ばれ、ミイナはもうひと口、煙を吸い込む。
満点の星空に向かいそれを吐き出すと、ポケットから小さなボタンのついた塩ポリ袋を取り出し、雪で火を消した吸い殻を入れた。
「さて、行きますか。」
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