エリート御曹司は獣でした
この前、望月フーズを訪問するために久瀬さんと外出した際、ドア口で乗友さんに呼び止められ、『わざとミスしたんじゃないでしょうね』と文句を言われたことを思い出していた。

今日は話しかけられませんように……と願いつつ、牛肉のしぐれ煮を静かに食べていると、どんどん近づいてきた彼女たちは、私の真後ろで足を止めた。

声をかけられることはなかったが、なぜここで立ち話をするのだろうと、居心地の悪さを覚える。


「今朝から気になっていたんだけど、明美のバッグ、あのブランドの限定品じゃない？」


明美とは、乗友さんの名前だ。

彼女の持ち物はどれも高級そうに見えるが、今日のバッグは特別に高いものらしい。

私の通勤用のショルダーバッグは、入社時からずっと同じものを使っている。

ブランドものではなく、地味なデザインだけど、革が馴染んできて気に入っている。

私は手頃な値段であることと、使い心地重視で買い物をするから、高級ブランド品を愛する乗友さんたちとは話が合いそうにない。

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