エリート御曹司は獣でした
それにより彼女たち三人が、ミーティングテーブルを囲うように集まってしまう。


「あら、結構いいものを使っているのね。意外だったわ」と、乗友さんは八重子ちゃんの腕時計を褒めた。

八重子ちゃんは、就職祝いとして両親から贈られた大切な腕時計だと説明したら満足したようで、椅子に座り直した後は呑気にブレンドティーを飲んでいる。

自分で乗友さんたちを呼び寄せておきながら、後のことに責任を持つ気はないようだ。


私はどうしよう……という視線を香織や綾乃さんと交わしている。

ふたりとも、乗友さんが苦手だ。

美人を鼻にかけるところが嫌いだと、以前、香織がはっきり言っていた覚えがある。

困りながら黙り込む私たちであったが、乗友さんたちは、今度は香織と綾乃さんの持ち物に興味を移した。


「そのパンプス、素敵なデザインね。え、アウトレット品なの? そうは見えないわ。買い物上手ね」

「そのスカート、あのブランドの? さりげなく着こなしていて、素敵だわ」


身構えている香織たちを、口々に笑顔で褒める乗友さんたち。

それを見ている私は、目を瞬かせている。


あれ、嫌味は言わないのかな……?


てっきりけなされると思っていたので、拍子抜けするとともに、疑ったことを心の中で反省する。
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