エリート御曹司は獣でした
「相田さん、すごいな! 一体、どんな魔法を使ったんだ?」

「久瀬さんと飲める日が来るなんて、異動願い出さなくてよかったよ。ありがとう。相田さんは事業部のヒーローだ!」


私も嬉しいけれど……あまり大騒ぎしない方がいいのでは。

期待値の高さに久瀬さんが気後れして、やっぱりやめると言い出さないか、心配していた。


肩を叩かれたり、頭を撫でられたり、大喜びする社員たちに揉みくちゃにされつつ、久瀬さんの様子を窺えば、彼は自分の机にファイルを置いて、着席しようとしているところである。

もうこちらには関心がないのかと思ったが、そうではないようで、チラリと流した視線が私と交わると、おかしそうに笑ってくれた。


どうやら、参加の意思は変わらないみたい。

よかった……とホッとしていたら、「相田さん!」と、慌てているような声で呼びかけられた。

振り向けば、乗友さんが焦り顔をしている。


「私も参加するわ。肉タワー鍋、美味しそうね。相田さんの上手な手料理、一度食べてみたかったのよ」


そう言われた私は、目を瞬かせた。

あれ……肉タワー鍋をバカにして、『行くわけないでしょ』と言ってなかった?
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