エリート御曹司は獣でした
思いきり私を睨みつけてから、彼女たちはミーティングテーブルを離れてドアに向かい、事業部から出ていく。

廊下に響くパンプスの音には強い苛立ちが感じられるので、今日のランチでの話題はきっと、私の悪口で決まりだろう。

敵対する気はないのに、なんでこうなっちゃうのかな……と、私は嘆息していた。


それから三日経ち、日曜日の今日は肉パーティー当日である。

私の自宅マンションは1LDKで、リビングダイニングは十畳ある。

そこに安物の座卓を壁際まで繋げて並べ、私を含めた十六人がぎゅうぎゅうに座っていた。


座卓には卓上コンロが置かれ、大きなサイズの土鍋ふたつが、食欲を誘う香りを立ち上らせている。

タワー状に巻きつけた豚バラ肉は、今はもう鍋の中に崩されて、グツグツと美味しそうに煮込まれていた。


十六時から開始した肉パーティーは、一時間ほどが経過しており、皆が買ってきてくれたビールや酎ハイ、カクテルの空き缶が床の隅に積まれている。

私は立ちやすいようにキッチン近くの端っこに座り、久瀬さんは男性社員に囲まれた中央の席だ。

「久瀬さん、久瀬さん!」とあちこちから話しかけられて、食べる暇もないほどに忙しい彼だが、その顔は楽しそうに見える。
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