エリート御曹司は獣でした
「はーい」と返事をした私は立ち上がり、ひとりでキッチンへ。

対面式ではないキッチンは、リビングダイニングの片隅に壁に向かって設置されている。

冷蔵庫を開けて、ご飯と万能ネギ、卵とチーズなどの、雑炊の材料を取り出していった。

空になった方の鍋はキムチ味で、チーズとの相性は最高だ。

まろやかにするために、豆乳を加えるのも忘れてはならない。

雑炊用に冷やしておいたご飯は、一度サッとざるで水洗いしてぬめりを取る。

その方が味が染み込みやすく、サラリとした食感になるからだ。


その作業をしようとしていたら、爽やかな水色のボタンダウンシャツを着た男性が、私の横に立った。

「手伝うよ」と言ってくれたのは、久瀬さん。

私ひとりでもすぐに終わりそうだけど、彼はの親切心を嬉しく思い、お礼を言って手伝いをお願いする。


彼は包丁で万能ネギを刻み、私は冷やご飯を洗って、卵を割りほぐす。

単身者用の狭いキッチンなので、ふたりが並べば腕が触れ合い、なんだが照れくさい。

ポン酢で狼化した彼には、もっとすごいことをされたというのに、このくらいで私は、なにをドキドキしているのかと心の中で自分に指摘を入れていた。
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