エリート御曹司は獣でした
久瀬さんは優秀な頭脳を持つ努力家だ。

私もこれまで、そこそこ仕事ができると思っていたのに、久瀬さんと比較すれば知識不足を自覚しないわけにいかない。

試食品を食べ終えて、その紙容器を握り潰した私は「もっと勉強します!」と力強く宣言し、それに対して久瀬さんは、クスリと笑って「頑張れ」と励ましてくれた。


その時……「ご試食、いかがですか?」と声をかけられた。

足を止めた私たちに笑顔を向けているのは、ユキヒラ食品というメーカーの若い女性社員である。

ユキヒラ食品といえば、冷凍コロッケで有名で、今回のイベントで紹介されている商品も、それであるようだ。


冷凍コロッケの容器包装はプラスチック製品が主流であり、紙製品を取り扱う我が社が、ユキヒラ食品から仕事を得るのは難しそうである。

パッと見た限り、ブース内に展示されているのは冷凍食品ばかりのようだが、他にはどんな商品を製造しているのだろう。

うちの顧客になる可能性は、あるだろうか……。

そう思いつつ、笑顔を作った私は、「いただきます」と差し出された試食品を受け取った。

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