エリート御曹司は獣でした
変身が始まったのを察した私は、慌てて周囲を見回し、逃げ場所を探した。
トイレに駆け込みたいところだが、あいにくここは会場の最奥で、出入口までは遠く、トイレにたどり着く前に彼は狼化してしまうことだろう。
どうしよう……と焦る私の目に止まったのは、五メートルほど先にある非常口のドアだ。
勝手に開けていいものかわからないが、迷っている暇はなく、「すみません、失礼します!」とユキヒラ食品のブースから離れ、久瀬さんの手を引っ張るようにして駆け出した。
非常口のドアを開けて中に飛び込み、急いでドアを閉める。
ここは味気ない蛍光灯に照らされた階段の踊り場のような場所で、他に人の姿はなく、話し声も聞こえない。
そのことにホッと息を吐き出したら、スーツの両腕が私の体に回され、久瀬さんに背中から抱きしめられた。
へ、変身完了ですか……。
「奈々子」と耳に吹き込むように甘く囁き、「お前を抱きたい」と欲情を隠すことなく打ち明ける彼。
自分の荷物とともに、私の肩からショルダーバッグのストラップを滑らせて床に落とし、ジャケットを脱がせようとしてくる。
トイレに駆け込みたいところだが、あいにくここは会場の最奥で、出入口までは遠く、トイレにたどり着く前に彼は狼化してしまうことだろう。
どうしよう……と焦る私の目に止まったのは、五メートルほど先にある非常口のドアだ。
勝手に開けていいものかわからないが、迷っている暇はなく、「すみません、失礼します!」とユキヒラ食品のブースから離れ、久瀬さんの手を引っ張るようにして駆け出した。
非常口のドアを開けて中に飛び込み、急いでドアを閉める。
ここは味気ない蛍光灯に照らされた階段の踊り場のような場所で、他に人の姿はなく、話し声も聞こえない。
そのことにホッと息を吐き出したら、スーツの両腕が私の体に回され、久瀬さんに背中から抱きしめられた。
へ、変身完了ですか……。
「奈々子」と耳に吹き込むように甘く囁き、「お前を抱きたい」と欲情を隠すことなく打ち明ける彼。
自分の荷物とともに、私の肩からショルダーバッグのストラップを滑らせて床に落とし、ジャケットを脱がせようとしてくる。