エリート御曹司は獣でした
「趣味とは言えないな。ゴルフも仕事のうち。付き合いでやってるだけだよ。楽しんで続けているのは水泳だけだな。駅前にスポーツクラブがあるだろ? そこでたまに泳いでる」

「そうなんですか……」


思わず彼の水着姿を想像してしまい、顔に熱が集中した。

久瀬さんは今、Tシャツに黒のカーディガンという姿だが、それを頭の中で脱がせると、滑らかで張りのある逞しい大胸筋が現れた。


実際に、見てみたい……。

そんな欲望が沸き上がり、私もスポーツクラブに通おうかと考えたが、それは無理だと却下した。

二の腕とお腹がプニプニだ。

私の水着姿なんて、とてもじゃないがお披露目できない。

それに、彼の裸見たさに入会するのは、ストーカーみたいで自分を嫌いになりそう。


「相田さんは?」と私の趣味も聞いてくれた彼に、「肉以外はこれといってないです」と正直に答える。


「休日は家で録画したドラマを見たり、レシピサイトを検索して新しい肉料理にチャレンジしてみたり。友達と食事に行くことも多いですね……あ、これも肉関係の趣味でした」

「すごいな。全てが肉食に繋がってるのか」


呆れずに楽しそうに笑ってくれた彼は、銀色の金属製のトレーを手に、キッチンスペースから出てきた。

トレーの上には、緑茶の入ったグラスがふたつと、ポン酢の瓶、スプーンに小鉢がのせられている。
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