エリート御曹司は獣でした
「昼食中にごめん。午後のチーム会議までに、これをやっておいて」

そう言った彼は、仕事の指示を書いたメモ用紙を私に手渡し、爽やかに微笑んだ。

それを見ている香織たちが、思わず感嘆のため息を漏らしたのが聞こえる。


なんて綺麗な笑顔。

もはや尊い域に入っているよね……。


彼は久瀬隆広(くぜ たかひろ)。入社六年目の二十八歳だ。

凛々しい眉と切れ長二重の瞳、鼻筋が通り、少々薄い唇を開いて微笑めば、白い歯がキラリと光る。

短い黒髪はナチュラルさを残して清潔なビジネスヘアに整えられ、サラリとした前髪が斜めに額にかかっていた。

加えて百八十超えの高身長で、程よい筋肉質の細身体型。

濃紺のスーツ姿が眩しすぎて、職場内でのサングラス着用を許してもらえないかと密かに思った時がある。


久瀬さんは、私がこれまで出会った男性の中で、間違いなくナンバーワンのいい男。

そう捉えているのは、私だけではなく、この部署の五十人ほどいる女性社員、全員であろう。
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