エリート御曹司は獣でした
な、なんで……。

下着が見えてしまったのは、私のミスで誤算だと認めるけれど、それでも、ぴょっこりはんのモノマネをしている最中に欲情できるとは、久瀬さんの性欲、恐るべし。


いや、感心している場合ではなかった。

このまま襲われてしまえば、正気に戻った時の彼に言い訳が立たない。

でも、まだ大丈夫。

他にも策は用意しているから。


強烈な色気を放つ麗しい顔が、すぐ目の前に迫っていた。

私の鼓動は勝手に高鳴り始めるが、負けてたまるかと彼の胸を全力で押し返し、次の手を繰り出した。


「久瀬さんに質問があります」

「なんだ? 女の好みか?」

「そんな感じの質問です。見た目がおじさんで中身は可愛い女性と、見た目が可愛い女性で中身はおじさん。付き合うなら、どっちがいいですか?」


ふたつ目の作戦は、究極の選択だ。

頭を悩ませれば性欲は落ちるはずで、そうすれば、本来の久瀬さんの自我が打ち勝ち、正気に戻るのではないかと真剣に考えていた。


さあ、存分に悩んでください……!


勝機を信じて口の端を上げ、拳三つ分の距離にある端正な顔を見上げていた。

けれども彼に、「両方だ」とアッサリ即答されてしまい、私は目を丸くする。


「え、両方……!?」

「ああ。どっちも可愛い女なんだろ? 迷う必要がどこにある」


マジですか……。
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