エリート御曹司は獣でした
望月フーズの担当者に連絡し、それを伝えるべきかと思ったのだが、今までの話し合いはなんだったのだと叱られる気がして躊躇してしまった。

このまま気づかなかったことにしようかな……という卑怯な気持ちが芽生え、昨日から、私の中で正義と悪がせめぎ合っている状況である。


取りあえず一旦保留としたその件を、今、久瀬さんに打ち明けたら、期待通りの反応を示してくれた。

私の耳を甘噛みし、背中に手を差し込んでブラのホックを外そうとしていた彼であったが、その手をピタリと止めて私から顔を離すと、「マズイだろ」と言ったのだ。


深刻そうに顔をしかめた彼が、至近距離から私に厳しい視線を向けている。


「価格を間違えて伝えたのは、こちらのミスだ。先方に誠心誠意謝罪して、すぐに新たな案を提示しなければならない」


その言葉は、仕事熱心で責任感の強い、いつもの久瀬さんらしいものであった。

元に戻ったのではないかと期待したが、まだなにかが違うようである。

真面目なことを言いながらも、彼の手は私のブラのホックを外し、胸の上まで一気にずらした。

「キャッ!」と声をあげた私は、あらわにされた裸の胸を慌てて両腕で隠した。
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