エリート御曹司は獣でした
「待って、待ってください! それ以上は私……ああっ!」


万策尽きて焦る私のお願いには耳を貸さず、彼は胸に舌を這わせ、頂きを口に含んだ。

なんとかして逃げなければと思いつつも、淫らな刺激に私は甘い声をあげてしまう。


すると彼が突然、「うっ」と呻いて苦しみだした。

呼吸を乱して額を押さえ、苦痛に顔をしかめている。

それが五秒ほど続いておさまると、彼がフッと全身の力を抜いたから、ずっしりとした重みを私が支えることになった。


元に戻ったんだよね……?


拘束を解かれた手で腕時計を確認すれば、十三時十九分二十二秒。

変身スタートから、三分二秒が経過していた。

久瀬さんが元に戻ったのは、ポン酢の効果が切れたためであり、私の努力によるものではない。

私の力で早めに正気に戻すという計画は、失敗に終わったということだ。


それを残念に思ったが、成果が全くなかったわけではないと前向きに考える。

変身している間でも、焦らせれば、久瀬さん本来の意識が入り混じるとわかった。

ということは、私が立てた治療計画の大筋は間違えていないはず。

これを繰り返し、誠実な久瀬さんに戻るように働きかけていけば、いつかは性欲狼となった彼の意識よりも、元々の彼が優位に立てるのではないだろうか。
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