エリート御曹司は獣でした
今回の成果と今後についてを、私が真面目に考えていたら、温かな吐息を裸の胸の上に感じた。

「戻ったか……」とゆっくりと体を起こした久瀬さんは、寝起きのようにぼんやりとした目をしている。

しかし、その目が私の胸を捉えたら……彼はハッとしたように慌てて私の上から下り、クルリと背を向けた。


「相田さん、ごめん! やはり俺から逃げられなかったんだね。キスして胸に触れた記憶はおぼろげにあるんだけど、俺はどこまでやってしまった……?」


気まずそうに問いかける彼の裸の背中を見ながら、私は身を起こしてモソモソと乱された服を整える。

「大丈夫ですよ!」と努めて明るく返事をしたのは、彼のためだ。


「久瀬さんがなんとなく記憶に残っていることだけです。それ以上のことはありません。予想の範囲内なので、私はこれっぽちも焦りませんでしたよ。ですから気にしないでくださいね」


本当はかなり慌てたけれど、胸に吸いつかれたなどと言えば、余計な罪悪感を抱かせてしまうので、曖昧な答え方にした。

私への被害を気にして、『もうやめよう』などと言われたら、私としても治せなかったことが心残りとなりそうだ。
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