エリート御曹司は獣でした
それからは落ち着いた気持ちで、久瀬さんと並んでソファに腰掛けている。

テーブル上には、私がコンビニで買ってきた肉惣菜と、彼が出してくれた有名店のアップルパイが並べられていた。

お茶を飲みつつ話すのは、私が感じた先ほどの治療の成果である。


「変な格好をしても、答えに迷う質問をぶつけてもダメだったんですが、仕事に関する話をしたら、いい反応があったんです」


ぴょっこりはんと究極の選択については、サラリと流す。

なるべく期待を持ってもらおうと、仕事の話をして焦らせたら、普段の真面目な久瀬さんの意識が浮上して狼化した彼と混ざり合うようだと、その点を強調して説明した。


「今回は三分経っちゃいましたけど、次回は最初から仕事の話をしてみようと思います。久瀬さんが焦りそうな話を探しておきますから、また来週チャレンジしてみましょう」

「俺が焦るような、仕事の話……」


そう呟いた彼は、口に運ぼうとしていたグラスを宙に止めた。

首をわずかに傾げ、なにかを考えているような顔をして、じっと緑茶の水面を見つめている。
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