エリート御曹司は獣でした
女は度胸だと自分に言い聞かせ、プニプニとした白い塊を箸で持ち上げた私は、目を瞑って口の中に入れた。

すると……。

なにこれ、美味しい!


火が通っていてもトロリとして、繊細な旨みが口の中に広がる。

上品な和風だしが、その味わいに奥深さを与えているようで、私は汁まで一気に飲み干し、ホッと息をついた。


この椀物の中に、鴨肉のつみれが入っていたら、もっとよかったのに。

肉と白子を一緒に食べれば、口の中でとろけた白子が上質なソースのように感じるのではないだろうか。

今度、自宅でやってみよう。


「精巣って、美味しいんですね。こんなの初めてです……」


空になったお椀を見つめてうっとりと呟けば、男性三人が同時に吹き出した。

「そこに引っかかっての食わず嫌いか。相田さんは可愛いな」と長野さんがお世辞を混ぜつつ笑ってくれたので、私の肩の力が抜けた。

そこからは支払いの心配も頭の隅に追いやって、食事に舌鼓を打つ。
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