不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
私を行かせまいとする強引さとは裏腹に、キスはとても優しい。のぼせそうになる寸前で唇を離され、私は吐息を漏らして俯く。


「もう、ズルい……こんなふうにされたら、我慢できなくなるじゃない」


彼のシャツをきゅっと掴み、ぽつりと呟いた。

明日のことも、自分の恋心にも、これ以上意地を張るのは諦めよう。


「本当は、私だって行きたくないわよ。耀と一緒にいたい。明日だけじゃなくて、ずっと一緒に」


観念してしまえば、心の声が勝手に口から溢れてくる。私ってこんなに素直になれたんだな、と驚くほど。

瞳を潤ませて眉を下げる私とは反対に、耀の顔にはやっと柔らかな笑みが戻ってきた。


「やっと聞けた。なっちゃんの本当の気持ち」


背中に手を回され、優しく抱きしめられる。心地よい腕の力に安堵して、高ぶった感情がゆっくり治まっていく。

「なにがあったのか話してくれる?」と言われ、私は彼に身を預けたままこくりと頷いた。

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