不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
しかし、彼は私に考える余裕を与える気はないらしい。


「今はそれより、気持ちを確かめ合いたい」


私の髪に指を通しながら言われ、ドキリとする。

視線を合わせれば、彼はやや長めの前髪の隙間から、愛おしそうな瞳を覗かせていた。


「僕はね、なっちゃんよりも強くなりたかったんだ。健康な身体で、誰にも惑わされずに、したたかに生きてる君が羨ましくて」


長い指に髪を絡め、耀は昔を懐かしむような表情でゆっくりと話す。

病気を持っていた耀からしたら、周りの健康な人は皆が眩しく映ったことだろう。

中でも、我を貫いて自由に生きていた私は、いろいろな制限があった彼にとって、特に印象的だったのかもしれない。

そんな幼い頃の彼の思いに気づくと、ちょっぴり切なくなる。


「再会したとき、今度こそ僕を男として意識してもらいたいと思ったし、君を助けるくらいの力はあることを見せつけたかった。もう『ひ弱で頼りない』なんて言わせないようにね。これが僕なりの“仕返し”だったんだよ」


耀はいたずらっぽく口角を上げて、仕返しの本当の意味を教えてくれた。
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