不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
【今日、仕事が終わったらネージュ・バリエに寄れる? 食事はキャンセルされたよね?】


想いが通じ合ったあとだとは思えない、甘さもなにもないメッセージ。

でも、その内容には引っかかりを覚えた。キャンセルされたことをすでにわかっているような調子なのはなぜだろうか。

いや、彼は昨日から食事を断っても大丈夫だと確信している様子だった。長沼さんが自分から電話してきたことにも、耀がなにか関係しているのかもしれない。

私もこの件についてはっきりさせたいので、【うん。行く】と端的に返事を送った。


午後七時半すぎ、私は約束通りネージュ・バリエにやってきた。この時間でもまだ社員は数名残っていて、久礼社長もいる。

耀の姿は見当たらないな、とオフィス内を見回していると、今日もワイルドさが素敵な社長が笑顔で出迎えてくれる。


「綾瀬さん、こんばんは」

「お世話になっております。パッケージのほう、順調に進めてくださってありがとうございます」


和やかに挨拶を交わし、しばしビジネスのお話をしていた。そうしているうちに、久礼社長は思い出したように独り言をこぼす。
< 112 / 124 >

この作品をシェア

pagetop