不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「ここで話し込んでたら、Akaruに怒られるな」

「Akaruさんに?」

「えぇ、あなたと話がしたいようなので」


予想外の言葉が返ってきて、私は丸くした目をしばたたかせる。

Akaruが私と話したいって、どういうこと? そもそも私の存在なんて知られていないだろうに。耀がなにか言ったのかな。

だとしたら、話というのは“私も耀が好きだから取らないで”的な、宣戦布告だったりして……。

デジャヴュだ。今度は私が奪われる側だけれど。これぞまさに因果応報……!

私がずーん、と穴の底に落下したような気分になっていることを知る由もない社長は、クールな笑みを浮かべて「あちらで待ってますから、どうぞ」と促す。案内されたのは、応接スペースの隣にある小部屋だ。

憧れのAkaruに会えるというのにまったく気乗りしないが、逃げ出すわけにもいかず、意を決してドアをノックした。

しかし、中から返ってきた「どうぞ」という声は、間違いなく男性。というか、この声は……。


「失礼します」


わずかに怪訝さを露わにしてドアを開ければ、パソコンが置かれたデスクの前に座っていたのは予想通り、耀だった。
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