不機嫌ですが、クールな部長に溺愛されています
「……へ?」

「アートディレクターとデザイナーを兼務してる。ここは集中したいときに僕がよく使う仕事場で、そこにあるラフも、君の手帳のイラストも、僕が描いたやつ」


詳しく説明され、ぽかんとしていた私はあんぐりと口を開く。数秒後、「えぇぇ~っ!!」という叫び声が響き渡った。

ふたりが同一人物だなんて、そんなまさか!

にわかには信じられない私は、バッグから手帳を取り出し、そのオシャレキュートな絵と耀を交互に見てうろたえる。


「ううう嘘でしょ? Akaruって女性じゃないの!? だって、こんなに可愛いイラスト……」

「だから隠してたんだよ。男が描いてるって知ったら、気持ち悪いと思う人もいるかもしれないだろ」


耀は腕を組み、当然のように言った。まだ半信半疑な私は、微妙な顔をして彼に詰め寄る。


「じゃあ、スイーツ好きだとか、裁縫が得意とかいう噂は?」

「あれは本当」

「へ……へぇ」


そこは偽りないのか。裁縫ができるって、私より女子力高いじゃない……。

若干ヘコんだものの、気が落ち着いてくると徐々に事実を受け入れられるようになる。

そういえば、耀は昔から本を読むだけじゃなく、絵を描いたりもしていた。それがとても上手で、子供ながらに感動したことを覚えている。
< 116 / 124 >

この作品をシェア

pagetop